ウワサの真相
ワグ・ザ・ドッグ

1998/04/22 GAGA試写室
抱腹絶倒の政治内幕コメディだけど、あり得そうな話でもある。
脚本よし監督よし役者よしの映画。最高! by K. Hattori



 ロバート・デ・ニーロとダスティン・ホフマン主演、監督はバリー・レビンソンという政治コメディ。上映時間が1時間37分という、最近の映画にしては「短いかな」という長さですが、中身がぎっしり詰まったハードパンチです。同じレビンソン&ホフマンのコンビで作った『スフィア』がへなちょこ映画だったので、この映画の出来には嬉しい驚きがある。脚本も役者もそろってイイし、演出もツボを心得ている。これは面白かった。アメリカでつい先日実際に起こった、クリントン大統領のセックス・スキャンダルと、その後のイラン危機との関連性が取り沙汰され、アメリカでも大ヒットした映画です。日本では公開規模が小さいのですが、観られる人は観ておいて絶対に損のない映画です。

 大統領の再選をうながすテレビCFから、映画がはじまります。「流れの真ん中で馬を乗り換えるな」というコピーとスライス・オブ・ライフ形式のCFが、いかにもありそうで笑っちゃいます。その一方で、報道官たちは間もなく発覚するであろう大統領のセックス・スキャンダルから、マスコミの目をどうやってそらすかを相談中。その場に呼び出されたのは、プロのもみ消し屋として大統領の信任を得ているブリーンという男。彼は架空の戦争をでっち上げて、マスコミと国民の目をセックス・スキャンダルからそらすことを考える。彼が次に連絡を取ったのは、ハリウッドの大物プロデューサー、スタンリー・モッツだった。モッツは瞬時に優秀なスタッフを呼び集め、ここに投票まで10日間に渡る一大でっち上げキャンペーンの幕がきって落とされる……。

 国内政治の失点を外敵の存在で乗り切るのは、アメリカの得意技。同じようなアイデアの映画としては、『ジョン・キャンディの大進撃』という映画もあった。『大進撃』も面白い映画だったけど、『ウワサの真相』はそれよりもっと手が込んでいる。とにかくあの手この手の方法でニュースを捏造し、世論をミスリードさせて行くのが痛快。難民少女の映像をスタジオ撮影とデジタル合成技術ででっち上げ、ニュースを演出し、テーマ曲を作り、戦争の英雄を強引に作り出してしまう。

 この映画のすごさは、こうしたアイデアのひとつひとつを、手抜きせずに作り上げていること。何しろテーマ曲作りにはウイリー・ネルソンが招かれ、ナッシュビルのスタジオで録音している完成曲は「ウィー・アー・ザ・ワールド」並に感動的なのです。

 これに限らず、この映画はキャスティングが豪華で、しかも抜群の冴えを見せている。難民少女を演じる子役というチョイ役にも『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のキルステン・ダンストが出演しているし、CIAの捜査官には、ウィリアム・H・メイシーが1シーンだけ出演するという豪華さ。中でも一番笑ったのは、戦争の英雄を演じるウッディ・ハレルソン。面白すぎる。『ボルケーノ』のアン・ヘッチも、ぜんぜん色気を感じさせない大統領側近役で出演してます。

(原題:WAG THE DOG)



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