チェイシング・エイミー

1998/04/23 日本ヘラルド映画試写室
恋人の過去がどうしても気になる男心に大いに共感する。
ベン・アフレック主演のラブ・コメディ。by K. Hattori



 『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でマット・デイモンと共にアカデミー賞脚本を受賞した、ベン・アフレック主演のラブ・コメディ。コミック作家のホールデンは、コミコンで知り合った女性コミック作家アリッサに好感を持つが、彼女がゲイと知ってショックを受ける。恋人同士に発展する可能性ゼロのふたりの関係だったが、ホールデンの熱烈なラブコールの成果があって友情は恋に変わる。ところがそれが、ホールデンの相棒バンキーには面白くない。彼はアリッサが過去に複数の男たちとセックスしていた事実を突き止め、ホールデンにそれを告げる。ホールデンはまたもや大ショック。はたしてホールデンとアリッサの関係はどうなる?

 自分の恋人の過去が気にならない人はいないと思う。やきもちを焼いても仕方ないことだとわかっていても、相手に昔つきあっていた恋人との関係を根掘り葉掘り聞いたり、なぜ過去の恋が破綻して、今自分と付き合っているんだろうと気にしたりする。「相手の過去なんか、ぜんぜん気にしたことない」という人も世の中にはいるかもしれないが、その大部分はやせ我慢しているか、自分自身を欺いているかのどちらかだと思う。この映画の主人公ホールデンは、自分の恋人が過去にどんな女性と付き合っていようと、どんなに激しいセックスをしていようと、それは忘れてしまおうと決心した。しかし、彼女が高校時代に複数の男性と乱交プレイをしていたことは、どうしても許しがたいと感じてしまう。この「許しがたい」というのは、彼女を非難したい、彼女を許せないという意味ではない。彼女を愛していながらも、彼女の過去にどうしてこだわってしまう自分自身に対する戸惑いが、彼をがんじがらめにしてしまうのです。

 恋人が過去にどんな人と付き合っていようと、そうした過去があってこそ、今現在、自分と付き合っている恋人がいるのだから、本当はすべての過去もひっくるめて恋人を愛するべきなのでしょう。そんなことは、誰だって理屈ではわかる。でも「嫉妬」というものは、理屈じゃないんだよね。ホールデンは苦しんで苦しんで苦しみぬく。心から彼女を愛しているのに、彼女の過去を嫌悪してしまう自分。こうした嫉妬が、結局は自分自身に対する自信のなさから来ているものだとわかったところで、それは何の問題解決にもなりはしない。

 タイトルの『チェイシング・エイミー』というのは、主人公が漫画のモデルにしている男から聞いた物語。彼は自分の恋人エイミーを愛していながら、彼女の過去の奔放な男関係に我慢ができず別れてしまう。「後悔したけど遅かった。それから俺は、いつだってエイミーの面影を追っているのさ」と語る男を演じているのは、この映画の監督ケヴィン・スミス本人。この映画は、監督自身の体験談から生まれたものかもしれません。

 アリッサを演じたジョーイ・ローレン・アダムズが好印象を与える映画です。レニー・ゼルウィガーにちょっと似てるかもしれない。今後は注目しておこう。

(原題:CHASING AMY)



ホームページ
ホームページへ