ズッコケ三人組
怪盗X物語

1998/05/13 東映第2試写室
那須正幹の人気児童文学「ズッコケ三人組」を映画化。
監督は『いちご同盟』の鹿島勤。by K. Hattori


 昭和53年に第1作「それいけズッコケ三人組」が発表されて以来、今も子供たちに人気の児童書として愛されている「ズッコケ三人組」。資料によれば、シリーズ全体で今までに36作まで出版され、全部で1,700万部を超える売り上げを記録し、児童書には珍しいファンクラブには4万人の会員がいるというのだから、これはすごい人気作なんですね。この映画は原作の中から「ズッコケ三人組対怪盗X」を選び、OV『静かなるドン』シリーズや映画『いちご同盟』の鹿島勤が監督している。僕は原作を1冊も読んでいないのですが、ごく普通の「映画作品」として十分に楽しめました。

 全国を股にかけ、大胆不敵な予告状で世の金持ちたちを震え上がらせている「怪盗X」が、主人公たちの町の警察に挑戦状を送り付けてくる。「この町で一番大切なものをいただく」とだけ書いてある予告状に、町は大騒ぎ。主人公たちは、怪盗Xの狙いが洞窟に隠された海賊の宝に違いないと考え、先回りして宝を見つけ出そうとする。はたして怪盗Xの狙いはなにか。その正体は?

 映画は序盤からエピソードが盛りだくさん。三人組が協力して泥棒を捕まえる話や、カブトムシを採りに行く話、教育実習の若い先生や、空手道場での話などが、数珠つなぎに登場してくる。これと平行して、序盤では物語の背景として怪盗Xの存在が描かれ、中盤以降、三人組の行動と怪盗Xの物語が重なり合ってくる構成です。僕は序盤で描かれている子供たちの活躍ぶりが、とても面白く、懐かしく思えました。物語の舞台になっているのは瀬戸内地方の小さな町なのですが、海や山で子供たちが遊びまわるのを見ているだけで、子供たちの感じているワクワクする気持ちが伝わってくるようです。子役たちの芝居もわざとらしくなくて、すごくのびのびして見える。さすがに小学生たちに「感情移入」まではしませんが、子役の臭みが鼻につくこともなく、わりと素直に見ることができました。

 この映画は、脇役の大人たちもすごくいい。東宝の『モスラ2』を観た時は、子供におもねった気持ち悪い大人の登場に辟易しましたが、『ズッコケ三人組』に登場する大人たちには、そうした媚びがないのです。役者たちもいい顔ぶれが揃ってる。主人公たち3人の母親を演じた、水沢アキ、原日出子、清水由貴子もよかったし、父親役の平田満と河野太郎も、タイプの違う父親を演じて物語に奥行きを出している。こうした家族の描写がきちんと描けていることが、この映画の足腰を盤石にしていると思います。室田日出男や藤竜也、梅宮辰夫、原田大二郎のようなベテラン俳優や、モト冬樹、ラッキィ池田、ウガンダ、田中裕二(爆笑問題)のようなお笑い系、大河内奈々子演じるヒロイン、大沢樹生、中島誠之助、倉田保昭などのゲスト出演者など、幅広い分野から集められた出演陣が映画を彩り、子供たちを好サポート。クライマックスは『インディ・ジョーンズ』ばりのスペクタクルになる、なかなか見応えのある映画でした。


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