アンラッキー・モンキー

1998/05/20 松竹第1試写室
『弾丸ランナー』のサブ監督最新作にして、彼の最高傑作。
出演者も豪華で重厚な仕上がりです。by K. Hattori


 デビュー作『弾丸ランナー』で注目され、2作目の『ポストマン・ブルース』で人気を定着させたサブ監督の最新作。ひょんなことから銀行強盗として警察に追われ、まったくの偶然から若い女を殺してしまった主人公が、すったもんだのあげくに自滅して行く様子を描くハイテンション・ムービー。『弾丸ランナー』のスピード感と、『ポストマン・ブルース』の情感を、それぞれ2倍半に増幅して合体させたような、今までより5倍面白いサブ監督の最高傑作だと断言しよう。出演俳優たちも今回は今までになく豪華。芝居の演出や場面転換もじつにあざやかで、映画監督としての力量に厚味が出てきた。サブ監督を「日本のタランティーノ」とおだてる人たちは『弾丸ランナー』の頃からいたが、この『アンラッキー・モンキー』を観ると、その掛け声もあながち大げさではないように思えてくる。(自分自身が小さい役で出演しちゃうところも、タランティーノに似てるぞ!)

 サブ監督は前2作を日活の配給で公開していますが、今回は松竹富士の配給になった。もともとはシネマジャパネスクのラインナップに入っていた映画ですが、今年正月の松竹内紛劇でシネマジャパネスクが廃止になり、社外にはじき出された格好。もっとも、これは「幸運」なことかもしれない。へたに社内に残ると、『てなもんや商社』みたいな扱いを受けかねませんからね。ただ、せっかくシネマジャパネスクを使ってサブ監督が全国区デビューするはずだったのに、シネマミラノで都内単館公開とはちょっとさびしい。時期をずらしながら全国公開するんでしょうが、それじゃ『弾丸ランナー』や『ポストマン・ブルース』の時と同じだって〜の。

 この映画でうまいなと感心したのは、オープニングの処理でした。黒地に白抜き文字のタイトルにかぶって、主演の堤真一の声がオフで聞こえている。ここから銀行強盗事件との遭遇、金の詰まったボストンバッグを抱えての逃走劇という展開が、じつにリズミカルで、無駄がまったくない。逃げて逃げて、突然ドシンとぶつかった相手が吉野公佳演ずるヒロインなんだけど、彼女もこの映画の中ではひとことも口をきかない。この映画は、無口な人が多いんだよね。

 主人公の堤真一はじめ、大杉漣や寺島進など北野映画でもおなじみの俳優たち、やくざ役の清水宏、殺し屋役の田口トモロヲ、ほんの1シーンに出演するダイアモンド☆ユカイ、バーテン役の堀部圭亮など、いまや「サブ組」とでも言うべき常連俳優たちが大挙出演。大林宣彦監督映画の顔でもある根岸季衣、伊丹監督作品の常連だった六平直政、実力派の脇役たちも加わって、物語に厚味を出している。こうした俳優たちが、またサブ監督作品の常連になって行くのかな。俳優に慕われるようになれば、映画監督としては一流です。

 とにかく前2作より格段にうまくなっているので、この調子で作品を撮りつづければ、サブ監督はもっともっと面白い映画を作ってくれそうです。


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