くノ一忍法帖
柳生外伝

1998/05/28 ユニジャパン試写室
山田風太郎原作の荒唐無稽な時代劇アクション映画。
もう少し画面に色気を出してくれ! by K. Hattori


 山田風太郎の「柳生忍法帖」を、『SCORE』『殺し屋&嘘つき娘』の小沢仁志が自ら脚色し、監督した映画。共同脚本は井上淳一。今回も自ら柳生十兵衛役で主演し、ヒロインには『ゼイラム』シリーズの森山祐子を迎えた。登場人物のコスチュームなど、ビジュアル面でのスーパーバイザーに、人気コミック「コブラ」で知られる寺沢武一が参加しているのも見どころだ。

 小沢監督は徹底した「アクション指向」の人なので、この映画のアクションシーンにも大いに期待していた。映画はオープニングがいきなり中国語のナレーションで始まり、雰囲気はほとんど香港映画。中に登場する荒唐無稽なアクションの数々も、正統派のチャンバラ時代劇というよりは、香港武侠アクション映画を思わせる。知っての通り、香港武侠映画のルーツは日本の時代劇なので、この映画は日本発のチャンバラ時代劇を香港経由で逆輸入したようなものです。狙っている方向としては、『スウォーズマン』シリーズみたいなものかな。

 国籍や時代背景不明というセンを狙ってますが、柳生十兵衛や千姫が登場するところを見ると、時代は江戸時代の初期でしょうか。時代考証云々を語るのに、これほど空しい作品もないので最初から避けちゃいますが、せめてもう少し人物の関係をスッキリ見せると、物語の腰が据わってきたと思う。家臣・堀主水のひとり娘に盲執し、彼女をかくまう尼寺を襲って罪もない尼僧たちを大量殺害した、会津藩主・加藤明成。彼とその配下の忍術使い「会津七本槍」に、生き残った女たちが復讐するとうストーリーだ。助っ人に立ったのは、高名な僧・沢庵和尚と柳生十兵衛だ。

 僕としては小沢十兵衛の豪快なチャンバラを期待したのだが、くノ一たちのパワフルな忍術の前に、十兵衛が活躍する場はほとんどなくなってしまった。森家には代々忍者の血が流れており、追いつめられた彼女たちの中で能力が次々と覚醒して行くのだが、「忍法乳波動」や「忍法こだま返し」の前に、十兵衛の剣がなんぼのもんじゃい! 惜しいのは、くノ一たちのキャラクターと忍術の描写が明確に見分けられないこと。彼女たちの個性がもっと描き込まれていると、面白いと思うんだけどね。彼女たちの十兵衛に対する思慕の念のようなものも、もう少しねっとりと描いてほしかった。

 全体の印象として、もっとギトギトに脂っこく描写してもいい場面が、やけにサラリと描かれてしまっているのが不満です。まず、女性の露出度がたりない。くノ一ひとりひとりに、必ず1度はヌードシーンを入れてくれ。おっぱいは必ず見せ、おしりも出すこと。男女のからみも、もっと粘っこく撮ってくれ。石井輝男監督の『忘八武士道』が、非常に参考になったと思うんだけど……。残虐シーンも、ただ血のりが多ければ迫力が出るってもんではない。殺陣にはまだまだ工夫の余地がたくさんある。勝プロ時代の三隅研次作品、中でも『子連れ狼』シリーズは参考になったと思うぞ。ちょっと勉強不足だね。


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