新生トイレの花子さん

1998/06/10 東映第1試写室
『リング』の高橋洋を脚本に迎えた、マジで恐い子供向けホラー。
全身の毛が逆立つようなシーンが幾つかあります。by K. Hattori


 松竹の『トイレの花子さん』、東宝の『学校の怪談』など、競合他社の夏物攻勢に押され気味だった東映が、遅れ馳せで参加した「トイレの花子さん物」。これはマジで恐いです。観ていて、前身の毛穴が開くような、戦慄すべきシーンが数々ありました。それもそのはず、この映画の脚本は『女優霊』『リング』の高橋洋になってます。『リング』の冒頭にも、女子高生たちの間でささやかれている「呪いのビデオ」の話を持ってきた人ですが、今回もまったく同じパターンで責めてきます。この出だしは「少し手抜きかな」とも思いましたが、途中からぐいぐい物語に引き込まれて、思い切りゾッとさせられてしまいました。東映の夏休み興行は、この映画と『ズッコケ三人組/怪盗X物語』の2本立てになってます。『ズッコケ〜』は小学生が主人公の明朗快活冒険譚で、この映画は中学生が主人公の怪奇物ですから、バランスとしては悪くない。これはそれなりに客足が望めるかも。問題があるとすれば、それは「恐すぎる」という点かな。小学生低学年の子は、夜中にうなされますよ。

 物語は中学校の入学式から始まります。主人公は新入生の倉橋里美。鉄筋コンクリートの真新しい校舎がまぶしい中学校ですが、じつは11年前、里美の姉が謎の失踪をとげている学校です。入学後しばらくして、里美は2年の女子トイレで不思議な幻を見て意識を失う。それは「トイレの花子さん」なのだろうか。じつはこの学校では、トイレの花子さんを見ると、その後に必ず誰かが死ぬか、行方がわからなくなるという噂があった。はたして今回は、誰が死ぬのだろうか。トイレの花子さんの正体は何者なのだろう。里美たちは霊感の強い間宮悦子に導かれるように、学校裏のやしろを荒らし、コックリさんで花子さんを呼び出したりする。それが、どれほど危険なことなのか自覚しないまま……。

 この映画は松竹版『トイレの花子さん』のように、現実に新聞をにぎわすような殺人事件も起こらないし、東宝の『学校の怪談』シリーズのように、特撮重視のファンタジー作品でもない。真正面から古典的な「お化け屋敷」に挑んでいます。特撮は必要最小限にとどめ、照明やカメラアングル、役者の芝居、音響効果などで、不気味な雰囲気を作り出し、観客を震え上がらせることに成功している。テクニックとしては『リング』とだぶるところも多いんですが、何度観ても恐いものは恐い。

 正直言ってしまえば、もう少し「初恋テイスト」が欲しかったような気もします。せっかく主人公に幼なじみの柏木浩輔というボーイフレンドを作っているのに、ふたりのカラミで物語が動くところがあまりない。思春期を迎えた中学生という年齢設定も、あまり生かされていたとは思えない。臨時教師にやってくる高島礼子も、もう少し役をふくらませる工夫ができたと思う。こうした注文は「ないものねだり」でしかありませんが、映画全体の出来が悪くないので、ついつい注文を出してしまう。シリーズになるなら考慮してほしいです。


ホームページ
ホームページへ