愛と復讐の騎士

1998/06/14 パシフィコ横浜
(第6回フランス映画祭横浜'98)
ダニエル・オートゥイユ主演の超大作チャンバラ時代劇。
活劇も美術も衣装も音楽も最高! by K. Hattori


 第6回フランス映画際横浜のクロージング作品となった、堂々2時間のロマン大作。ルイ14世時代のフランスを舞台に、庶民出の剣士ラガルテルと剣の達人ヌヴェール公爵の友情、ヌヴェールの腹黒い遺産相続人ゴンザグの裏切り、ヌヴェールの忘れ形見オーロールの恋、そして華麗な復讐劇を描いている。劇中で何度も登場するチャンバラに手に汗握り、友情と愛に涙し、恋に胸ときめかせることを保障します。ロケーション撮影を多用した、スケールの大きな画面作り。シネスコ画面に映し出される古い街並いっぱいに繰り広げられる活劇は、金にあかせた今のハリウッド映画でも到底作れないものでしょう。今の時代、これだけ風格のある時代劇を作れるのは、もはやフランスしかありません。

 欠点はこの陳腐な邦題ぐらいです。オリジナルの予告編を観るかぎり、この映画の売りは明らかに「活劇」にあります。今さら『愛と○○の××』でもありますまい。これでは血沸き肉踊る大活劇の魅力が、ちっとも伝わってこないではありませんか。この映画が日本で公開されるかどうかは知りませんが、もしどこかが買い付けて公開するのなら、もっとマシな邦題を考えてください。

 主人公ラガルテルを演じているのは、『八日目』のダニエル・オーテゥイユ。彼と友情で結ばれるヌヴェール公爵には、ヴァンサン・ペレーズ。悪役ゴンザグには 『ボーマルシェ/フィガロの誕生』のファブリス・ルキーニが扮しています。ペレーズとオートゥイユは共に剣の達人という設定なので、チャンバラ場面が何度も出てきますが、ふたりの剣さばきは大したものです。特にペレーズが夜の広場で刺客の闇討ちにあう場面と、石作りの狭い路地の中で、十数人の敵と戦う場面は素晴らしい。中でも闇討ち場面は、相手の剣を奪って二刀流の殺陣まで見せてくれます。左手に持った剣は、逆手斬りだったようにも見えたぞ。これにはチャンバラファン感激!

 20年間にわたる大河ドラマですが、脚本には少しの無駄もありません。導入部で人物関係や各人物の性格を語る場面も、段取り芝居にならずにきちんと物語の中で消化している。公爵が結婚して遺産が娘にわたることを防ごうと、ゴンザグが公爵の結婚式を襲って一族を惨殺。花嫁を奪って公爵を殺しますが、駆け付けたラガルテルが辛うじて娘を救い出す。自分を刺した相手の顔を見ながら、それをラガルテルに告げられないまま息を引き取った、ヌヴェール公爵の無念さ。ヴァンサン・ペレーズの好演が、ラガルテルの復讐の誓いに力を与えています。

 ハリウッドでも欧州チャンバラ映画『仮面の男』を作ったりしていますが、『愛と復讐の騎士』は登場する人物が当然ながらフランス語でしゃべるし、大道具(建物)も小道具(家具調度品)全部本物を使っている。スタジオで作ったイミテーションは、絶対に本物にかなわない。脚本演出の完成度は言うに及ばず、壮大なスケール感でも『タイタニック』を凌駕する完成度。監督は『まぼろしの市街戦』のフィリップ・ド・ブロカです。

(原題:LE BOSSU)


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