マドモアゼル a GOGO

1998/06/17 ユニジャパン試写室
'74年に『女の望遠鏡』という題で日本公開されたこともある映画。
今じゃ珍しい、元気一杯の「女の子映画」です。by K. Hattori


 ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールが出演した、1972年製作のフランス映画。監督はリシャール・バルドゥッチ。日本では'74年に『女の望遠鏡』というタイトルで公開されている。恋人から大型望遠鏡をプレゼントされた女のアパートにたむろする女たち4人組が、銀行強盗のアジトから大金を盗み出そうとするのだが……、というドタバタコメディ。原題を直訳すると『素直でいることってとっても楽しい! あるいは、4人の女ネズミと強盗』という意味だとか。黒いタイツ姿の4人組が、男たちの部屋に忍び込むクライマックスはとても楽しく、「可愛い」と表現するのが一番ピッタリな映画になってます。4人組を演じた、ベルナデット・ラフォン、エリザベット・ヴィエネール、ジェーン・バーキン、エマ・コーエンが全員すごくキュートです。

 ジェーン&セルジュのコンビに特別な思い入れのあるファンにとって、この映画の公開は嬉しいことかもしれません。でもそれ以外の人たちにとって、この映画が「どうしても観なければならない映画」だとは思えませんでした。日本じゃビデオになりそうもないような映画なので、この機会に観ておこうという人を止めはしませんけどね。それに、この映画のジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールは「出演者」のひとりであって、主演というわけではありません。ふたりが大活躍するところを期待すると、ファンの人たちも裏切られるかも。

 もちろん、この映画は全編すごく楽しい映画です。原色に満ちたサイケな映像トーンなど、今観ると、とてもポップで、すごくキッチュ。サイレント映画のような、素朴で大げさなドタバタは面白いし、意外にも大規模なスタントシーンがあったりして、後半は見応えがある。でも、これはやっぱり四半世紀前の映画なのです。26年という歳月を割り引いて観ないと、素直には楽しめないでしょう。むしろ同じくらい楽しいく、ポップで、キッチュな映画なら、間もなく公開される『スパイス・ザ・ムービー』を観た方がいい。こちらは間違いなく、今現在の映画になってるもんね。

 最近輸入されるフランス映画というと、中年俳優が主役の渋い映画ばかり。かつてはアイドルだったソフィー・マルソーも、今じゃすっかり中堅女優だもんね。シャルロット・ゲンズブールも子供生んじゃって、今じゃお母さんだし。『一番美しい年令(とき)』のエロディ・ブシェーズや、『シングル・ガール』のヴィルジニー・ルドワイヤンのような新顔もいますが、若さがはじける元気はつらつな映画が、なかなかありません。むしろ中年の恋愛を描いた『カドリーユ』や『恋するシャンソン』の方が、はるかに元気があって面白い。フランス映画からは、アイドル映画というジャンルがなくなってしまったのだろうか……。そんな目でこの映画を観ると、この映画の元気の良さは新鮮に感じられます。ジェーン・バーキンは『恋するシャンソン』にも出てますけど、昔はすごく可愛かったんだなぁ……。

(原題:TROP JOLIES POUR ETRE HONNETES ou 4 SOURIS POUR UN HOLD-UP)


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