フラッド

1998/07/01 徳間ホール
大洪水に襲われた町で、強盗団・警備員・保安官の戦いが始まる。
洪水を再現した巨大な屋内セットがすごい! by K. Hattori


 連日の大雨で町が洪水に飲まれようとしている時、現金輸送車が強盗たちに襲われた。警備員のひとりは強盗たちに撃たれて死亡。生き残った若い警備員は、車から現金を持ち出して、強盗たちに反撃するチャンスをうかがう。町民たちも避難して、水浸しのゴーストタウンと化した町の中で、警備員・強盗団・保安官たちの死闘が繰り広げられる……。タイトルの『フラッド』は邦題だが、もともと映画のワーキングタイトルとして使われていた『THE FLOOD』をそのままカタカナにしたもの。英語の「flood」には「洪水」という意味があるが、これに「the」が付いて「THE FLOOD」になると、「ノアの洪水」という意味になる。聖書の創世記にある、40日降り続いて世界を水の底に沈めたという大洪水。それがこの映画のタイトルになっている『THE FLOOD』なのだ。

 強盗団を出し抜く若い警備員トムを演じているのは、『ブロークン・アロー』のクリスチャン・スレーター。強盗団の首領ジムには、やはり洪水映画である『ディープ・インパクト』で大統領を演じていたモーガン・フリーマン。最後まで町にとどまり、治安を守ろうとする保安官マイクに扮しているのはランディ・クエイド。修復作業中のステンドグラスを守るため、避難勧告を無視して町にとどまるカレンに、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー候補になったミニー・ドライバー。個人的にドライバーの最近の活躍ぶりを「ハリウッド七不思議」に数えている僕ですが、今回のドライバー嬢はとてもチャーミングに撮れていたと思う。最後の最後まで、スレーターとドライバーが恋仲になったことを強調しないのが展開がよろしい。彼女は男やロマンスに縁遠いヒロインが似合う女優です。全編雨が降りつづけるウェットな映画ですが、彼女のドライな持ち味が、映画に軽やかさを与えていたと思う。

 巨大なプールの中に町並みのセットを建て、それが時間経過と共に、少しずつ水中に没して行く臨場感。なんでも、少しずつセットの足元を切りながら、最後はセット全体を水の中に沈めてしまったのだそうです。これはオープンセットではなくて、体育館のような巨大なスタジオの中に作られた室内セットなんです。飛行機の格納庫を改造したという特製スタジオは、東京ドームの1.5倍の広さがあり、その中に町並みが原寸大で再現されていたというのだから驚き。スタジオの天井には、1分間に120トンの水を降らせる散水装置が取り付けられ、止むことのない大雨を出現させたといいます。

 映画は久しぶりに正統派の災害ドラマを見させられた気分。最近は「強いヒロイン」が流行のようですが、やっぱり手錠で縛られるのはヒロインで、それを助けるのはヒーローだよね。このあたりは『タイタニック』への対抗意識が感じられる。最近「出過ぎ」とも思えるモーガン・フリーマンですが、今回の役は奇をてらうことないタイプキャスティングになっていて、安心して観ていられます。パターン通りだけど、それがいいのです。

(原題:HARD RAIN)


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