劇場版 機動戦艦ナデシコ
The prince of darkness

1998/08/03 東映第1試写室
人気テレビアニメの劇場版。物語はテレビの3年後からはじまる……。
テレビ版を見ていないので面白さも半分。by K. Hattori


 '96年秋から半年間放送された、人気テレビアニメの劇場版。物語はテレビの総集編ではなく、テレビで完結した物語の続編になっている。テレビ版に登場した主なキャラクターが総出演しているようなので、番組を欠かさず見ていたファンの人は必見の映画でしょう。劇場では『スレイヤーズごぅじゃす』との2本立て上映ですが、この2本の映画に製作として名を連ね、現場で采配を振るっているのは、昨年の大ヒット作『新世紀エヴァンゲリオン』も手がけた大月俊倫。角川書店、キングレコード、テレビ東京、セガ、ムービックス、東映などからなる製作委員会としては、「エヴァの夢よもう一度!」ということがあるのでしょうが……。

 僕はテレビ版のエヴァを見ないまま、劇場で『新世紀エヴァンゲリオン』を観ましたが、それでも内容はおおよそつかめたし、作品としても面白く観ることが出来た。でも今回の『ナデシコ』は、テレビ版を見ていないと話がぜんぜんわからない。僕はテレビを見ていませんが、各キャラクターが繰り出すルーチンギャグなどが、ちっともわからなかった。人物関係がわかると、昔の乗組員たちを次々に集めてくる場面で「おお」という驚きや喜びがあるのでしょうが……。う〜ん、残念。

 この映画は最初から、テレビ版の視聴者に対するボーナス映画として位置付けられているのではないだろうか。続編映画は「同窓会映画」という要素が強いのですが、この映画は1本丸々、文字通りの同窓会映画になっている。映画はテレビ版終了から3年後が舞台。前作の主人公格だったミスマル・ユリカとテンカワ・アキトは、謎の事故で死んでいる。しかし史上最年少の宇宙軍艦長となった16歳のホシノ・ルリは、「火星の後継者」と名乗る反乱軍の中にアキトとユリカの姿を見た。はたして「火星の後継者」たちの狙いは何なのか。アキトとユリカはどこに姿を隠しているのか。ルリはナデシコの元乗員たちを集め、謎の究明のために旅立つのだった……。

 映画の中で一番楽しいのは、昔の仲間をひとりずつ訪ねて行く場面でしょう。戦火の中を共に戦った仲間たちが、平和な時代の中でどんな暮らしをしているのか。それを覗き見していく楽しみと、皆が自分たちの生活をなげうってルリに手助けしてくれる頼もしさ。こうした「仲間集め」の楽しさが、この映画の楽しみの6割以上を占めていると思う。その証拠に、苦労して人を集めた割には戦闘シーンが短く、昔の仲間たちが戦力として活躍する場面がほんのわずかしか描かれていない。このため戦場に行く道中は、仲間同士がワイワイガヤガヤと旅をする、学生の修学旅行かピクニックの行列のような賑やかさになっています。これは製作側のねらいでしょう。

 テレビ版を見ていないので、SF作品としての細かな設定がわからず、未来社会の描写もどこがテレビ版以上に進歩しているのかさっぱりわからない。でも要所にはさまれているギャグには大いに笑わせてもらったので、知らない人が見てもそれなりに楽しめるのかな。


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