釣りバカ日誌10

1998/08/08 丸の内松竹
試写でも観てるけど、初日の初回を劇場で鑑賞。面白かった!
コメディは劇場で観たほうが盛りあがる。by K. Hattori


 試写で1度観ていたのですが、今回はミニオフがあったので、公開初日に再度の鑑賞となりました。丸の内松竹では1回目の上映と2回目の上映の合間に舞台挨拶があることもあって、場内は立ち見も出る盛況振り。僕も本編開始5分前に劇場に着いたら、しっかりと立ち見になってしまった。でも映画はとても楽しく、多少の足の疲れなどぶっとばす快調な展開。次々と登場するギャグに、館内のお客さんが爆笑しているのを観ていると、その同じ空間に身を浸して同じ場面で同じように笑っていることが、とても幸せなことに思われました。やはり喜劇映画は、一般のお客さんと一緒に映画館で観たほうが面白いのかもしれません。

 僕は試写で観ているからどのギャグも全部知っているんだけど、それでも面白いものは面白い。お馴染みのメンバーたちが繰り広げる安定したアンサンブルが、なんとも言えない絶妙の間を生み出している。これはもう、古典落語みたいなものです。ギャグもわかりやすいものから、わかりにくいものまで千差万別。そこいらのおじちゃん、おばちゃんが観ても、映画ファン歴数十年のマニアが観ても、それぞれ満足できる作りになってます。

 マニアックなギャグと言えば、例えば今回舞台になっているのが九州小倉で、ハマちゃんに恋のキューピットをしてもらう青年の名前が富田松五郎という名前になっているのは、映画『無法松の一生』を知っている人にはすごく面白いギャグ。しかし、ここまではマニアでなくとでもわかる。でも、小倉に来たスーさんが、なぜ突然小倉弁で話し始めるのか、その理由のわかる人がどれだけいるだろうか。じつは昭和38年製作の東映版『無法松の一生』に主演しているのが、三國連太郎その人。元・富田松五郎が、若い富田松五郎の親代わりとして結納式に出席しているわけです。

 今回は北九州市が映画を誘致して市制35周年記念作品にしていますが、残念なことに映画の中心は、東京の鈴木建設本社内で行われる社長退陣とその後のドタバタ騒ぎ。金子賢と宝生舞のエピソードは、スーさんの大活躍ぶりがすごすぎて、映画の脇に追いやられてしまった。小倉に行ってからのエピソードは、駆け足もいいところ。これでハマちゃんのハワイアン熱唱とゲストスターの登場がなければ、終盤はずいぶんと見劣りしたでしょう。

 登場人物のキャラクターが観る側に飲み込めているというのは、シリーズ映画最大の強みです。今回の映画でも、ハマちゃんが若い松五郎に「彼女だって、子供がいらないなんて男と一緒に暮らしたくないだろ」と諭すシーンがありますが、これはハマちゃんとみち子さんが、どれだけ子供が欲しがっていたか、ようやく生まれた鯉太郎をふたりがどれだけ可愛がっているかを観客がよく知っているから、決して説教くさく感じない。こうした台詞は、登場人物のキャラクターの中から自然に出てくるものですからね。こうしたシリーズ映画のよさを、これからも大事にしていってほしいです。


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