ラブ・ゴー・ゴー

1998/09/21 ユニジャパン試写室
台湾の20代の若者たちを描いたオムニバス風の映画。
笑いあり涙ありで、僕は大満足。by K. Hattori


 台湾のチェン・ユーシュン監督が、『熱帯魚』に続いて撮った長編第2作目。叔母の店で働くパン職人のアシェン、パン屋に毎日レモンパイを買いに来るアシェンの元同級生リーファ、パン屋に下宿するミュージシャン志望の若者シュウ、同じく下宿人の太った女の子リリー、防犯グッズのセールスマンとして働くアスンなど、台湾の20代の若者たちの生活を、オムニバス風に描いた作品。少し前に、やはり台湾映画の『JAM』という作品を観たが、あれもオムニバス風の映画だった。台湾ではこうしたスタイルの映画が流行っているのだろうか。

 リーファ役のタン・ナと、アスン役のシー・イーナンは台湾の人気歌手だそうで、この映画では例外的な美男美女。それ以外のキャストでは、オデブちゃんのリリーを演じたリャオ・ホェイチェンはマネージャー業が本職、アシェン役のチェン・ジンシンは映画のスタッフ、シュウ役のマ・ニェンシェンはミュージシャン。この3人は、本作が映画初体験ということながら、じつに見事に役になりきってました。リリー役のリャオ・ホェイチェンとアシェン役のチェン・ジンシンは、金馬奨の助演女優賞と助演男優賞をそれぞれ受賞しています。

 アシェンが幼なじみのリーファになかなか自分の名を告げられず、ケーキに変わった名前をつけてアピールしたり、やけにファンシーな便箋に手紙を書いたりするシーンは身につまされてしまった。この冒頭のエピソードでは、アシェンの小心ぶり、うろたえぶりでさんざん笑わせておいて、最後に手紙の文面でホロリとさせます。彼にとってリーファは恋愛の対象ではないのです。それが逆に、彼の純粋さを感じさせてくれます。

 2番目のリリーのエピソードは、何と言っても一番笑えます。町で偶然ポケベルを拾ったリリーは、ポケベルの持ち主と電話で愛を語り合うようになる。ぜひ会いたいと言う彼の気持に応えたいのは山々ながら、リリーはとてもオデブちゃん。そこで、会うと決めた期限までに、せっせとダイエットに励むことになる。この苦心惨憺ぶりが笑わせますが、その背景にある純な乙女心も丁寧に描かれているので、笑いの質は温かいものになる。

 3番目のエピソードは、セールスマンのアスンと、美容室で働くリーファの物語。これは前のエピソードのコミカルなタッチから打って変わって、スリリングな活劇と切ないラブストーリーの匂いがします。リーファがテレビでアシェンの歌を聴きながら泣き笑いするシーンは、ちょっとジーンと来てしまいました。

 オムニバス風に途中で主人公が交代して行く映画ですが、エピソードのつなぎは完全にシームレス。それでもエピソードのまとまりがいいから、違和感はまったくない。1話目の人情コメディ、2話目のスラップスティック、3話目のラブストーリーと、エピソードごとに作風ががらりと変わるところも、観客の「お買い得感」につながります。時間配分としても、各エピソードはテレビの1時間ドラマぐらいなんだよね。楽しい映画でした。

(原題:愛情来了 / LOVE GO GO)


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