エクソシスト
デジタル・リミックス 25周年記念版

1998/11/01 パンテオン
東京国際ファンタスティック映画祭
伝説のオカルト映画を最新取材のメイキングつきで特別上映。
日本でも劇場公開してほしい映画です。by K. Hattori


 ウィリアム・フリードキンが監督したオカルト映画の決定版を、デジタル・リミックスで上映。この映画はアメリカは劇場公開され、大ヒットを記録したそうですが、日本では劇場にかかるかなぁ……。今回はワーナー映画75周年のアニバーサリー企画として、BBCが製作したドキュメンタリー番組とあわせての上映です。映画祭のゲストとして、悪魔に取り憑かれた少女リーガンを演じていたリンダ・ブレアを呼ぼうとしたそうですが、スケジュールの都合でかなわず、ビデオで彼女のメッセージが流されました。彼女は女優業のかたわら、地球環境や動物の権利についての活動をしているそうです。舞台のうえで小松沢プロデューサーが「リンダ・ブレアさんはスケジュールの都合で来日できませんでした」と言ったときは、観客席から「どんな仕事だよ!」というツッコミが入りそうな雰囲気でしたが、どうやらちゃんと仕事をしているようですね。

 僕はこの映画も劇場では観ていなくて、ずっと昔にテレビ放送を見た程度。最初見たときは映画後半の悪魔ばらいシーンのイメージが強烈だったのですが、今回改めてスクリーンで観ると、神父と悪魔の対決シーンはじつに短いことに驚かされました。(ちなみにマイク・オールドフィールドの「チューブラ・ベルズ」も、ポイントになる場面に少し流れるだけです。)この映画で長々と描かれているのは、映画の前半から中盤にかけてのホームドラマ部分。リーガン母娘の家庭と、カラス神父と母親の関係を描くことに、映画の過半がさかれています。

 リーガンが悪魔に取り憑かれて不思議な現象が次々に起こった際、彼女の母親はまず医者に相談します。これは現代人としては当然の反応でしょう。医者はまず、脳の器質的な障害を調べ、異常がないとわかると、今度は精神的な障害について調べはじめる。しかしその頃になると、ベッドが跳びはね、部屋の家具はひとりでに動きはじめるなど、あきらかな超自然現象が次々に起こりはじめるのです。医者はさじを投げ、母親に「カトリックの神父に相談しては」と持ち掛けます。一方、相談を持ち掛けられたカラス神父も、人間的な悩みを多く抱えた男として描かれています。母親を孤独死させてしまったことが、彼の良心をさいなんでいる。彼は自分の信仰にも自信を失いはじめている。

 この映画に描かれているのは、物質文明と科学信仰の中で、神を必要としなくなった人間たちの姿です。リーガンの母親は無神論者だし、カラス神父でさえ信仰に疑問を持っている。そんな人間たちが、現代人の常識では解釈も解決もできない事件に遭遇したとき、どうふるまうのか。実際の悪魔払いの儀式が始まったとき、カラス神父はまだ半信半疑です。リーガンの様子は、確かに教会の定める「悪魔つき」の現象に合致する。しかしカラス神父は、悪魔の存在を本当に信じていいものか迷うのです。といって、この映画は決して「信仰の大切さ」を訴えた映画などではない。そこがユニークです。

(原題:The Exorcist: 25th Anniversary Special Edition)


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