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花嫁は僕の胸に

1998/11/03 パンテオン
東京国際ファンタスティック映画祭
運命的な恋に落ちた恋人たちが、結婚目指して大奮闘。
これは傑作。ぜひ日本でも一般公開して!by K. Hattori


 東京ファンタでは、映画上映前に挨拶や前説が付くのが習わしになっている。この日のインド映画特集でも、数多くのゲストが登場して、映画にまつわる話をしていた。しかしこの日最後の上映となったこの映画ほど、力の入った前説はなかっただろう。まずは小松沢プロデューサーの挨拶、次いでインドセンター代表の挨拶、さらにインド大使館公使の挨拶があり、一段落したところで数十人のダンサーたちが舞台に登場するや踊りまくり、最後に登場したのはこの映画の主演女優カージョルだった。超満員の場内にはインドやその周辺国からの観客も大勢やって来ていたらしく、インドの大スター女優の登場に、場内が一時騒然としたほどだ。この雰囲気は楽しいとかすごいを通り越して、ちょっと恐いほどだった。

 前説というのはとかく大げさになりがちなので、「近年のインド映画では最高傑作」と言われても「はいはい、そうですか。前説はいいから早く観せてよ」という感じだったんですが、映画が始まってみると、この前説がまったく誇張でも何でもないことがわかりました。この映画はすごい。3時間を超える長編映画でありながら、無駄な場面がひとつもない。インターミッション(今回の上映では省略)をはさんだ前後編で、映画のタッチをがらりと変える構成も見事だし、役者の演技も音楽もダンスも、すべてが素晴らしい出来映えです。

 卒業旅行で偶然知り合った、ロンドン在住のインド人女性シムランと、同じくロンドン在住の青年ラージ。始め反発し、やがて互いに惹かれあうようになるふたりだが、自分たちの気持ちを相手に打ち明けないまま旅行は終わってしまう。じつはシムランには親の決めた婚約者がいて、旅行が終わったらインドに行って結婚しなければならないのだ。駅で別れたとたん、自分たちがいかに相手を愛しているかを悟ったふたり。ラージはシムランを追いかけてインドに行くが、結婚式まではほとんど時間がない。着々と準備が進む中、ラージはシムランの家族に取り入り、何人かを味方に付けるのだが、難関は結婚を強引に進めている彼女の父親だった。はたしてふたりは無事に結婚できるのだろうか……。

 例によってインターミッションなしで上映される3時間超の大作ですが、映画の前半はロケを多用したヨーロッパ周遊編、後半は地元インドで撮影した熱愛編とでもいった趣向。ラージを演じたシャー・ルク・カーン(日本では『ラジュー出世する』が公開されている)は、最初ただ調子のいい不良学生にしか見えないのですが、そこから意外に誠実な面が現れてくる。映画の後半では、彼が機転と誠実さで花嫁獲得に孤軍奮闘するのです。映画の前半もすごく面白いのですが、後半の盛り上げ方がすごい。シムランの頑固親父が最後の関門になるのですが、恋は障害が多いほど熱く燃えるのです。

 笑わせて、泣かせて、最後は拍手喝采。同じ3時間のラブストーリーでも、これは『タイタニック』の何倍も充実している。ぜひ日本公開してくれ。応援するぞ!

(原題:Dilwale Dulhania Le Jayenge)


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