ショムニ

1998/11/24 松竹第1試写室
真面目OL塚原が社内の魔窟・庶務二課で出会う怪物OLたち。
原作・脚本・監督はいいが内容は期待はずれ。by K. Hattori


 週刊モーニングで連載されていた安田弘之の人気コミック「ショムニ」が、江角マキコ主演でテレビ・ドラマ化されて人気大爆発。それに企画不足の松竹が飛びついて、映画オリジナルのキャストで作られたのがこの作品だ。じつは僕、原作を読んでません、テレビ・ドラマ版も見てません。だからこの映画については、純粋に、客観的に、何の思い入れもなく、作品として評価できると思うんですが……。これは……駄目だと思うぞ。脚本は『私をスキーに連れてって』や『病院へ行こう』シリーズの一色伸幸で、監督は『居酒屋ゆうれい』の渡辺孝好と、決して悪い顔合わせではないと思ったんだけどなぁ。

 中堅商事会社・満帆商事の経理部に勤めるごく普通のOL塚原佐和子が、社内で「落ちこぼれOLの隔離病棟」と陰口をたたかれている総務部庶務二課、通称「ショムニ」に1日だけのヘルプとして臨時配属される。前日に2年付き合った恋人に振られたばかりの塚原にとって、これは泣きっ面に蜂の衝撃。ショムニは噂通りの魔窟で、エキセントリックな個性の持ち主たちがひしめき合い、午前中に1時間しか仕事をしない面々は昼休みに生ビールで乾杯して気勢を上げる。午後は動力付きの事務イスで社内をドライブし、あげくはロビーで会った社長にまで軽口をたたく始末。彼女たちと同類に見られては大変と、塚原はあわてふためくのだが、やがて彼女自身もショムニの色に染まって行くのだった……。

 映画は遠藤久美子演ずる塚原と、高島礼子演ずるショムニの恐いお姉さん坪井千夏を中心にストーリーが展開する。真面目OLの塚原が出会う、ハチャメチャなショムニとのカルチャーギャップが前半の見どころ。中盤では変人に見えたショムニのOLたちの素顔を見せ、真面目一方だった塚原が、自分の殻を破って成長して行く終盤へとなだれ込む。ここで問題になるのは、映画の序盤で会社の重役たちからすら恐れられていたショムニの名物女・坪井千夏が、後半では塚原の成長ぶりを見守る保護者のような立場になってしまい、誰よりも常識的な行動を取り始めることだ。これはあまりにもつまらない。これは映画の前半で、坪井の非常識さやアナーキーさを描き足りていないのではないか。なぜ彼女があれだけの事をしてもクビにならないのか。それは周囲の誰もが、彼女にある種の脅威を感じているからでしょう。「触らぬ神に祟りなし」と納得できるレベルまで、彼女の行動をエスカレートさせて欲しかった。

 結局のところ、高島礼子は坪井を演じるにはミスキャストだったのではないだろうか。彼女がフェラチオ回数券を配ると、本当に何かしてくれそうな気がするもんね。僕が彼女に回数券をもらったら、ちょっと嬉しいぞ。でもこの役には本来、「そんなこと頼んだら、チンチン食いちぎられそうで恐い」と思える女優が欲しいのです。一方で塚原を演じた遠藤久美子は、わりと面白い味を出していた。ハスキーボイスで「ショムニは我が社の宝です」と叫ぶところや、処女喪失の報告をする場面は最高。


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