ウェディング・シンガー

1998/12/16 GAGA試写室
アダム・サンドラーとドリュー・バリモア主演のラブコメディ。
1985年の風俗描写が懐かしくて大笑い。by K. Hattori


 「ドリュー・バリモアはまだ若い!」という当たり前の事実に、改めて気づかされた映画だった。彼女は子役出身で『E.T.』の時がわずか6歳。その後いろいろありまして、酒にも溺れ、薬にも溺れ、男にも溺れました。しかし、それでも「往年の名子役」で終わらなかったのが彼女のすごいところ。私生活でどんなトラブルがあろうとも、しっかり映画に出続けるのは、芸能人一家に生まれたものの血筋だろうか。たとえ来る役がどれも、すれっからしの売春婦タイプばかりだったとしても、彼女はしっかり映画に出続けたのだ。

 そうこうしている内に、ここ数年、映画界全体から彼女の方に追い風が吹いてきた。最近は『世界中がアイ・ラヴ・ユー』にしろ、近日公開の『エヴァー・アフター』にしろ、かつての彼女の役柄からは考えられないような、普通のお嬢さん役が多いぞ。芸歴と私生活のゴタゴタが彼女を貫禄十分のベテラン女優に見せているわけですが、彼女は1975年生まれで、まだ23歳なのです。『スクリーム』で共演したネーヴ・キャンベルの方が、彼女より3つも年上なんだよね。ドリュー・バリモアにとって、年相応の普通の女の子役が回ってくるようになったのはいいことです。彼女にとって、ここ数年は転機の年になるんじゃないでしょうか。

 ずっとドリュー・バリモアの話になってしまいましたが、この『ウェディング・シンガー』はバリモア主演というより、サタデー・ナイト・ライブ出身の若手俳優アダム・サンドラー主演作と言った方が正しそう。宴会場と契約して結婚披露宴でバンド演奏と歌と司会を担当する「ウェディング・シンガー」が、自分自身の人生とパートナーを見つけだす物語です。主人公が歌手なので、パーティーシーンでは次々に最新のヒット曲が歌われます。この映画の場合、時代背景が1985年に設定されているのがミソ。歌われるヒット曲も「当時の最新ヒット曲」なので、半分は懐メロ気分なんだよね。登場人物の会話やファッションにも、'85年当時の風俗がふんだんに盛り込まれていて笑えます。ムーンウォークやブレイクダンス、ルービックキューブもあったよね。どれもこれも懐かしくて、あたしゃ涙が出てきたよ……。

 作りとしてはミュージカル風のノリが感じられるところもあり、ミュージカル映画好きの僕としては非常に楽しめました。男女の友情が恋に変わる定番のストーリー、誤解やすれ違いが連続するお決まりの展開、主人公たちの周囲にいる気のいい友人たち、ささいな誤解がもとで恋が破局寸前に至るありきたりなクライマックス、周囲の協力と拍手の渦の中でのプロポーズ、そして愛を確かめ合うふたりのキス……。こうした先がミエミエの展開が、じつに心地よい。へんに物語をひねったりせず、ウェルメイドであることを、少しも恥じていない潔さに好感が持てる。こうした物語の単純さに花を添えているのが、結局は'80年代の風俗と音楽ということになるのかな。まんまと術中にはまりました。でも面白いよ。

(原題:The Wedding Singer)


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