共犯者

1999/01/25 東映第1試写室
マンガ家きうちかずひろの監督5作目。劇場映画3作目。
これはかなり期待はずれだった。by K. Hattori


 人気マンガ「ビー・バップ・ハイスクール」の原作者として有名な、きうちかずひろの映画監督作。この人、じつは今回の映画が5本目の監督作です。'91年にVシネマの『カルロス』でデビュー。'94年には自身のマンガを原作にした『BE-BOP HIGHSCHOOL』で劇場用映画にも進出し、その後も'95年に『JOKER』をVシネで監督、一昨年は劇場作品2作目の『鉄と鉛』を監督している。異業種監督としてコンスタントに作品を発表している度合いは、北野武ほどではないにしても、石井達也よりは上です。『BE-BOP HIGHSCHOOL』は鹿島勤監督の『今日から俺は!!』の併映作、『鉄と鉛』は確か川島なお美の『鍵』の併映と、今までは2本立て作品のBプロ的な扱いが多かったきうち作品ですが、今回はいよいよ東映系劇場で堂々と一本立ちするらしい。

 今回の『共犯者』は、デビュー作『カルロス』の8年後を描いた続編映画だ。ヤクザ組織を壊滅させた日系ブラジル人マフィアのカルロスは、本国の強制送還を名目に出所し、替え玉工作を使って自由の身となる。カルロスはかつて関わりを持ったヤクザから1億円の金を預かり、それを巡って再びヤクザ組織と対立することになる。そば屋で知り合った女をかくまい、殺されたヤクザの舎弟を引き受け、カルロスとヤクザの殺し屋の戦いが始まる……。カルロスを演じているのは竹中直人。元そば屋の女店員が小泉今日子。ヤクザの殺し屋を演じているのは、内田裕也と大沢樹生。ブラジルから来た警官役で、マコ・イワマツがゲスト出演している。ヤクザの若い幹部役で、北村一輝が出演しているのもうれしい。

 じつを言うと、僕はこれがきうち作品を観る初めての体験。この映画の前作『カルロス』も見ていない。そのせいか、主人公カルロスのキャラクターや、彼が起こした8年前の事件について劇中で説明されても、それが「実感」できない面がある。『共犯者』は『カルロス』を見ていなくても、話だけはわかる。しかしキャラクターに感情移入度させるには、この映画単独では力不足だと思う。ヤクザたちが「カルロスはすごい!」と言うだけではなく、カルロスの行動そのものから、観客がすごいと思える部分がほしかった。

 小泉今日子は映画に出るときなぜかいつも暗い役が多く、今回も暴力亭主に折檻されて逃げてくる女という役柄だ。屈折した弱い女が戦いの場で強くなるという展開は、石井隆の『GONIN2』の二番煎じのようにも感じたが、彼女がヤクザと昔の亭主相手に銃をぶっ放すシーンには爽快感があった。彼女については、まずまず及第点。問題は内田裕也演ずる殺し屋だ。彼が登場して英語混じりのキザな台詞を喋り始めると、試写室には笑いが起きていた。これって笑いを取る場面じゃないと思うんだけど……。笑っちゃいけないのに思わず笑ってしまうのでは、このキャスティング、あるいは殺し屋のキャラクターに問題があるのは明白だろう。

 近日中に『カルロス』も観る予定。そちらに期待する。


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