グロリア

1999/01/27 GAGA試写室
ジョン・カサベテス監督とジーナ・ローランズの代表作。
『レオン』のもとになった作品かな。by K. Hattori


 シャロン・ストーン主演のリメイク版が今年中には公開される、ジョン・カサベテス監督とジーナ・ローランズの代表作。マフィアに命を狙われている少年を、マフィアの情婦だった中年女グロリアが助ける物語だ。今から19年前の作品だが、ファッションなどの風俗描写が古びているものの、映画の内容やテーマそのものは古びていない。ただし話の展開には、ちょっとわからない点もあるのです。主人公グロリアが、同じマンションの友人から子供を預かるのはともかくとして、少年の家族が惨殺された後、なぜ彼女が警察に少年を届けないのかは疑問だ。「前科があるから警察には行けない云々」という台詞はあるものの、だからといって命がけで少年を助ける理由にはならないような気がする。また、グロリアと少年が何度か仲違いと仲直りを繰り返すくだりも、そうした心の動きをもたらすのが何なのかよくわからない。ひとつひとつのシークエンスは見事でも、シークエンスから別のシークエンスに移動するときに、少し展開の無理を感じる場面があるのです。もっとも、こうした欠点があるからこそ、リメイク話も出るんでしょうけどね。

 僕は今回この映画を観るのが初めてだったんですが、最初に気がついたのは、この映画とリュック・ベッソンの『レオン』がすごく似ていることです。少年の家族が住むアパートがマフィアに襲撃される場面で、「この場面は『レオン』で引用されてたな」と気づいてからは、話の組み立てもすごく似ていることが気になった。『レオン』が『グロリア』から影響を受けていることは明白だし、話そのものも「大胆に解釈し直したリメイクです」で通ってしまうものだと思う。もちろん『レオン』にしか出てこない設定やエピソードも多いけど、核になるアイデアは『グロリア』からのパクリに近い。グロリアがホテルの部屋に戻らず、少年がひとりでピッツバーグの墓場でグロリアに語りかける場面なんて、『レオン』のラストシーンと同じじゃないか。ハッピーエンドにならない『グロリア』が『レオン』なのです。

 ギャングたち相手に銃をぶっ放すグロリアの姿は痛快ですが、僕は彼女が明確な目的を持たずに子連れで逃げ回っている点がすごく気になった。かつての男や仲間たちを裏切り、命を狙われ、警察に助けを求めることすらできない彼女は、にっちもさっちも行かない状況からどうやって抜け出そうとするのか。少年をマフィアに突き出せば、自分の身の安全は保障される。だが彼女はそうせずに、かつての仲間たちに銃を向ける。なぜ彼女は先の展望もないまま、自らの退路を断ってしまうのだろうか。この映画は「子供を殺すな」「子供を危険な目にあわせるな」という暗黙の前提に、大きくもたれかかり過ぎていないだろうか。グロリアをもっと利己的な女として描き、その上で「子供を助けないことにはどうしようもない」という状況に置き去りにしないことには、この物語はスムーズに動いていかないような気がするのです。というわけで、僕はリメイク版に大いに期待してます。

(原題:GLORIA)


ホームページ
ホームページへ