デッドマンズ・カーブ

1999/02/08 メディアボックス試写室
自殺学生のルームメイトがオールAをもらえる制度を悪用した犯罪。
だがその裏には秘められた陰謀があった。by K. Hattori


 アメリカの大学に伝わる都市伝説の一種に、「デッドマンズ・カーブ」という成績優遇制度がある。ルームメイトが自殺した場合、同室の学生の精神的なショックを和らげるため、その学期の成績は無条件でオールAにするというのだ。あまり公にはならないが、こうした制度は実際にいくつかの大学で取り入れられているらしい。この映画の主人公は、ハーバードの大学院を目指しているものの、あまり成績が芳しくないクリスとティム。彼らはデッドマンズ・カーブの特例措置を悪用して、下がった成績を一気に取り戻そうと考える。そのためには、ルームメイトが自殺しなければならない。哀れな犠牲者として白羽の矢が立ったのは、同室のお坊ちゃん学生ランドだった。クリスとティムは飲酒の上での発作的自殺に見せかけてランドを殺し、死体を校内の崖から川に投げ捨てた。だがこれは、事件の端緒にすぎなかった。

 ティムを演じているのが『スクリーム』のマシュー・リラードなので、それだけで観客に「裏に何かある」「こいつは絶対に何かをたくらんでいる」と思わせてしまうのが難点。僕は映画の中盤で、ティムの陰謀に気づいてしまいました。これはむしろ、クリスを演じたマイケル・ヴァルタンか、ランド役のランダル・ベイティンコフと役を交換した方が面白かったかもしれない。そもそも、校長室でランドの自殺を知らされたティムが、大げさに嘆いたり憤ったりする様子が、観客の目から見ていかにも「猿芝居」に見えてしまうのはまずいよ。ここはいかにも本当そうに嘆いてみせないと、ティムの二重人格じみた性格や、自己保身のためには他人さえ蹴落とす冷たい残虐さが見えてこない。

 新人監督ダン・ローゼンは、この映画で自ら脚本も書いている。このストーリーそのものは、着想といい展開といい、文句なしに面白いものだ。演出の段階で上滑りになっている部分(たとえば『ディア・ハンター』をパロディにした「ビールハンター」ゲームは笑えない)もないではないし、最後によく考えると釈然としない部分もあのだが、物語の巧みな構成でそれを補っている。最後のどんでん返しは、二重三重のどんでん返しを売りにした『ワイルド・シングス』より面白いと思った。ミステリー映画なのでこれ以上は内容を詳しく書けないが、最後の最後にどんでん返しがあり、そのままでは後味が悪くなりそうな映画をすっきりとまとめている。

 後から考えると釈然としないのは、「そんなに凝った計画を立てる時間を勉強にさいてれば、もっといい成績が取れるんじゃないの?」と思うぐらい、計画が複雑に入り組んでいるからです。それに「あんたの、あの時の態度はどう説明するんだ?」という描写も多い。また欲を言えば、殺されるランドの性格が、もう少し描かれていた方がよかったかもしれない。この結末の付け方にはまったく文句がないのだが、そこに至る過程で小さな筋道を付けておかないと、最後になって戸惑う点が出てくる。小さな傷ですが、この手の映画でそれは大事です。

(原題:DEAD MAN'S CURVE)


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