オリンピック・グローリー

1999/02/08 東京アイマックス・シアター
1998年の冬季長野オリンピックを記録した公式ドキュメンタリー。
アイマックスの大画面で観る競技に血が騒ぐ。by K. Hattori


 昨年長野で開催された、冬季オリンピックの公式記録映画。アイマックスの大画面を使った40分たらずの作品だが、16日間の日程から主要なエッセンスだけを取り出して高純度に精製した、見応えのある映像作品になっている。オリンピックの開催期間中、テレビにかじりついて協議結果に一喜一憂していた人は、これを観て「なんだ、あの場面がないじゃないか」と思うかもしれない。だがこれは、オリンピックの全競技を網羅したものではないし、協議結果を羅列したハイライト集でもないのだ。そんなものは、テレビのスポーツ・ニュースに任せればいい。この映画では、雪や氷の上を滑走して行く選手たちの躍動感を、大画面を十分に使い切ったフルスケールの迫力で伝えようとしている。オリンピックの名場面集や名勝負集というより、オリンピックに集約されるウィンター・スポーツの魅力そのものが、この映画の主役なのだ。視覚と聴覚から伝わる圧倒的な迫力に、思わず全身の毛が逆立つような快感を感じます。

 エグゼクティブプロデューサーがキャスリン・ケネディ、プロデューサーがフランク・マーシャル。普段はハリウッドで劇映画を作っているスタッフがプロデュースした作品だけに、娯楽映画としての面白さも十分です。前回のリレハンメルでジャンプに失敗した原田選手が、過去を克服して会心のジャンプを決める場面。雪のないアフリカのケニアから冬季オリンピックに初めて参加した、フィリップ・ボイト選手の訓練ぶり。初の公式競技となった女子アイスホッケーの決勝戦。体格に劣る清水選手が、スピード・スケート500メートル決勝で見事に勝利する場面。その他、このオリンピックに参加した選手たちのさまざまな人間模様を織り込んで、ヒューマン・ドキュメンタリーとしての要素も適度に配合しているあたり、単なる「映像ショー」では終わらせない用意周到さを感じました。さすが、やることに抜け目がない。

 この映画はアイマックスの2D作品ですが、僕は3Dより2Dの方が好きなので文句はない。大画面のスクリーンと大型フィルムを使った映像は、これ以上ないほどシャープでクリア。画面は明るいし、3D作品に付き物のフリッカーや頭痛とも無縁だし、もう言うことありません。画面がでかいので、劇場の一番後ろの席に座っても、視界全体がスクリーンになるのは、いつものことながらすごいと思う。この劇場に来ると、映画以前にスクリーンのサイズで感動しちゃうんだよね。通常の35ミリに比べて10倍以上の面積がある大型フィルムを使っているので、大きな画面でも隅々まで荒れずにシャープな映像になる。この映画では、ジャンプや大回転競技をロングショットで撮影したシーンに、アイマックスの効果がよく出てました。これは普通の映画じゃ、細部がつぶれてしまうでしょう。

 それにしても、この映画はまさに「編集の妙技」です。フィギュアスケートをわずか数分に圧縮した場面は、この映画のクライマックスだと思います。

(原題:OLYMPIC GLORY)


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