ポーリー

1999/02/10 GAGA試写室
人間の言葉を喋るオウムが主人公のロードムービー。
『ドクター・ドリトル』の10倍は面白い。by K. Hattori


 ドリームワークスの映画なのに、なぜか日本ではギャガとゼアリズの共同配給で公開されるファンタジー映画。1羽のオウムが自分の飼い主である少女のもとに帰ろうとする『名犬ラッシー』的な物語だが、主人公であるオウムのポーリーは人間の言葉が喋れるので、途中で出会う人間たちとのエピソードも一筋縄ではいかない。大人の鑑賞にもたえる良質のファンタジーにはなっているが、基本的には同じドリームワークス作品『マウス・ハント』などと同じで子供向きの作品。本当ならUIP配給で日本語吹替版も用意してもらいたかったところだ。この映画については公開規模も小さいので、日本語版はビデオ発売まで待たなければならない。

 物語はある動物研究所の地下室から始まる。ロシア人の掃除夫ミーシャが、厳重に鍵をかけたかごに入っている1羽のオウムを発見。そのオウムは人間の声を真似るだけでなく、言葉を理解し、会話することができた。ポーリーと名乗るそのオウムが、なぜ薄暗い地下室でかごに閉じ込められているのか。ポーリーは自分の生い立ちと数奇な運命を、ミーシャに語り始める。

 ポーリーが生まれて最初に出会ったのは、小さな人間の女の子マリーだった。ポーリーは彼女と無二の親友になるが、彼女の両親はオウムと遊ぶ我が子の姿に不安を感じ、ふたりを引き離してしまう。マリーのもとに帰りたいと願いながらも、人の手から手へと渡って行くポーリー。親切な老婦人にマリーの家に連れていってもらうが、既に一家は引っ越した後だった。ポーリーは老婦人と共に、アメリカ横断の旅に出るのだった……。

 主人公のオウムについては、動物トレーナーが訓練した本物と、スタン・ウィンストンが製作したアニマトロニクスを使っている。最近の技術進歩はすごいです。両者の区別は、ほとんどつきません。監督は『草原とボタン』のジョン・ロバーツ。『草原とボタン』もノスタルジックな物語でしたが、今回もその作風を生かして、ちょっと懐かしさを感じさせる物語に仕上げている。配役的にはジーナ・ローランズが目玉だと思いますが、他にも『ザ・エージェント』のジェイ・モアや、『メン・イン・ブラック』のトニー・シャローブ、ブルース・デイヴィソンなど、映画ファンならどこかで見たことのある顔ぶれが登場。こうした俳優たちの芝居によって、「オウムが人間と会話する」という単純な物語に厚みを与えているのです。全体にほのぼのした、いい映画です。

 主人公がおりに閉じ込められている状態から物語が出発するため、映画は常に悲劇めいた暗さをはらんでいる。ユーモラスな場面も多いけど、その後に来るだろう悲劇を観客が知っているため、素直には笑えない。むしろホロリとさせる場面がいくつかあって、僕は何ヶ所かでしっかり泣かされてしまいました。ジーナ・ローランズのエピソードが、やっぱりいいんだよね。こうして終盤までずっと悲劇をやっているから、最後の最後に物語がパッと開けたときの喜びが大きい。感動しました。

(原題:Paulie)


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