ウルトラマンガイア
超時空の大決戦

1999/02/17 松竹試写室
子供向きのテレビドラマを映画用にスケールアップ。
小中和哉監督の特撮映像は最高!by K. Hattori


 小中和哉監督の映画版ウルトラマン・シリーズ第3弾。今までにも『ウルトラマンゼアス2』『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ』がありましたが、どれも水準以上の出来映え。今回も面白かった。このシリーズは毎回主人公のヒーローが変わります。テレビ放送に合わせて主人公がバトンタッチしていくので、これはある程度しょうがないんでしょう。観客として想定されているのは、テレビを見ている子供たちです。小中監督は少し前に『なぞの転校生』も作っていたけど、それよりウルトラマン・シリーズの方が似合っていると思う。今後も同じペースで、どんどん映画版を作ってほしい。

 今回の作品は、おそらく映画『スフィア』にアイデアの元があるのだと思う。願うだけで何でも現実化する赤い玉を拾った少年が、テレビ番組のヒーローであるウルトラマンガイアを呼び出す。赤い玉の存在を知った別の少年は、ガイアと戦わせるため怪獣を呼び出します。テレビの中の人気者に直接会える、しかも演じている俳優ではなく、ヒーローその人に会える……、子供なら誰もが夢見ることが、赤い玉の力によって現実化するのです。この映画の中では、虚構のウルトラマンが現実になるのではなく、別の次元に実在するウルトラマンが、時空を越えて現れることになっている。似ているけど少しずつ違うパラレルワールドが無数に存在しており、その中に、ウルトラマンガイアが実際に生きているのです。

 赤い玉は人間の欲望を際限なく肥大させ、それがその世界の住人を滅ぼしてしまう。赤い玉は少女の姿を借りて、世界から世界へとジャンプを繰り返している。いつかこの無益な繰り返しが終わることを願いながら……。滅亡した世界から別の世界へジャンプを繰り返す少女のエピソードは、小中監督の前作『なぞの転校生』にも登場するイメージです。この映画に登場する世界は、我々が住んでいる世界とものすごくよく似ているものの、やはり我々の世界とは違う。この映画の世界も、無数に存在するパラレルワールドのひとつに過ぎないのです。その証拠にこの映画の中の人間には、「テレビ版組に出演している俳優」という概念がない。赤い玉の力で町に呼び出された我夢(ガム)は、最初から最後までウルトラマン扱いされている。誰も彼に「今日は撮影ですか?」「いつも見てます、がんばってね」とは言われない。

 小中監督はいつも特技監督を兼ねているのですが、デジタル合成やCGをふんだんに使ったきらびやかな画面作りには、いつも感心してしまいます。このシリーズの特撮は、『ゴジラ』にも『ガメラ』にも似ていない。どこを見ても小中流の特撮になっています。つい先日観た『ガメラ3』などと違い、あまりリアル指向ではないような気がします。ある程度は作り物ぽさを残している。

 前2作は併映が『ウルトラニャン』というアニメでしたが、今回は『ウルトラマンM78劇場』にバトンタッチ。僕は『ウルトラニャン』の方が好きだったんだけど、肩の凝らないショートショートもいいかもね。


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