大きな鳥と小さな鳥

1999/03/05 映画美学校試写室
パゾリーニが『奇跡の丘』の次に作った風刺喜劇だが……。
すいません、寝てしまいました。by K. Hattori


 ピエル・パオロ・パゾリーニ監督が、『奇跡の丘』の次に撮った風刺劇。上映時間は1時間26分。旅をする父と子が、人間の言葉を話すカラスと出会い、一緒に旅を続ける物語。じつは終始ウトウトしながら観ていたので、話の流れがよくつかめませんでした。小さなエピソードが断片的に連なっていて、それぞれは特に関連がないように思えます。タイトルの文字を片っ端から歌い上げて行くオープニングと、聖フランチェスコに鳥への伝道を命じられた修道士が、丸1年の祈りの末に鳥の言葉を身に着けるというエピソードが面白かった。「スズメの言葉がわかったぞ」と叫んで飛び跳ね回る修道士の姿が、何とも滑稽で笑ってしまいました。

 父と息子が1本道を去って行くラストシーンが、チャプリン映画の引用であることは明らか。映画の中にはサイレント映画風のコマ落とし映像もあるなど、古典的なコメディ映画をベースにした映画になっている。ただ、こうした表現が何を批判し、茶化したものなのか、今となってはさっぱりわからない。利己的で愚かな親子と、左翼インテリのカラスが旅をし、最後は親子がカラスを焼いて食べてしまうという話にどんな意味があるのだろう。字幕を全部歌にするオペレッタ風のオープニングは驚くし面白いけど、それに匹敵する笑いは、映画の最後までついに現れなかったように思う。

 パゾリーニの映画はこれで3本観たわけだが、デビュー作の『アッカトーネ』が少し面白かったぐらいで、あとはイマイチ。モノクロの映像は、どうも眠くなっていけません。パゾリーニの長編14作品の内、モノクロはこの『大きな鳥と小さな鳥』までの6本。このうち、日本できちんと公開されているのは『奇跡の丘』1本だけなのも、なんとなくうなずけてしまう。次の『アポロンの地獄』以降8本作られたカラー作品は、日本ですべて公開されているんですが……。逆に言えば、今回の「パゾリーニ映画祭」の目玉は、日本で公開されなかった初期のモノクロ作品にあるのかもしれない。マスコミ向け試写で上映される4本の中に、日本未公開の『アッカトーネ』と『大きな鳥と小さな鳥』が入っていることからも、この映画祭の目的が見えるようです。

 『大きな鳥と小さな鳥』に話を戻します。映画の序盤に出てきた天使の扮装をした少女は、『奇跡の丘』で天使の役をしていた人ではなかろうか……。それだけがちょっと気になった。普段は試写の最中に寝てしまうと、別の日の試写で映画を再度観ることにしているんですが、今回の映画祭についてはそれぞれ1回ずつしか試写を回さないので、眠りこけた失敗を取り戻すことができない。「パゾリーニ映画祭」で時間がとれるようなら、ユーロスペースまで観に行こうと思う。ゴールデンウィークには「日映協フィルム・フェスティバル」もあるし、6月に入れば「フランス映画祭横浜」もあるから、スケジュール的にはかなりタイトになるんですけどね……。でも、パゾリーニを観るチャンスだもん。

(原題:UCCELLACCI E UCCELLINI)


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