君を見つけた25時

1999/03/15 シネカノン試写室
ビビアン・スーは香港の屋台でスカウトされたの?
古さと新しさが融合した傑作ラブコメ。by K. Hattori


 『恋する惑星』『ブエノスアイレス』『裏町の聖者』などで知られる香港のスター俳優トニー・レオンと、CMやバラエティ番組で日本のお茶の間(死語)でも大人気のビビアン・スーが初共演。女性に振られてばかりいる広告ディレクターのワイが、偶然発見した美少女アーユー。ワイは彼女をCMキャラクターに起用して大スターにするが、同時に彼女との間に恋心も生まれて振り回されるはめになる。それまで振られてばかりいたワイなのに、この時はどういうわけか新任の女性上司にも気に入られてイイ感じに発展。一生の内に1度あるかないかという、超モテモテ状態に突入する。だが、もともとモテたことのないワイが、そんな状態をうまくさばけるはずがない。二兎を追う者は一兎を得ずで、愛するふたりの女性が両方とも去ってしまうことになる……のか?

 人物配置もストーリーもきわめて単純。単純だから、いろいろと肉付けもできるし、アレンジもできる。例えば人物の設定を見てみよう。恋愛下手だが流行の最先端を行く職業につき、収入もそこそこでいい暮らしをしている主人公。彼の前に現れる第1の女は、彼と同年輩で仕事がバリバリできる美人のキャリアウーマン。第2の女は、田舎出身で都会の垢にまだ汚れていない美少女。物語の基本は、この3人の三角関係になる。もちろん、美人キャリアウーマンにレズの噂があるとか、美少女に身寄りがなくて孤独な身の上だという設定もアリ。

 物語としてはこれだけでも成立するのだが、ラブコメには本筋とは直接関係のない魅力的な脇役が必須だ。そこで登場するのが、恋愛下手な主人公と対照的に、ありとあらゆる女性を口説いてはモノにするプレイボーイの同僚。さらに、そのプレイボーイを秘かに慕う真面目なOL。これで会社関係はバッチリだ。でもこれではまだ主人公の周囲が寂しいので、「若い頃はモテモテだったわい」と豪語する父親を登場させて、人生経験に裏打ちされた金言を要所で語らせる……。まさに完璧。まったく無駄のない人物配置ではないか!

 この映画では、主人公が三角関係に落ち込むのがミソ。それがないと、広告カメラマンが無名の美女をスカウトしてスターにする『パリの恋人』になってしまう。『君を見つけた25時』はラブコメの伝統をしっかりと現代風に咀嚼して、きちんと現代のラブコメを作っているところが素晴らしい。しかも、最後の最後になってこれが「ビビアン・スー芸能界デビュー秘話」になるところなぞは、昔のいんちきなアイドル映画みたいで楽しいぞ。

 セックスについてのあけすけな会話はいかにも現代風だし、ベッドでの会話と心の声を掛け合いで処理するあたりはウディ・アレンの『アニー・ホール』みたい。人物配置そのものは古典的なのに、こうした肉付けによって映画の古くささをまったく感じさせないのだ。監督・脚本は、『君さえいれば/金枝玉葉』『ボクらはいつも恋してる!/金枝玉葉2』の脚本を書いたジェームズ・ユェン。この名前を聞けば、面白さにも納得。

(英題:YOUR PLACE OR MINE!)


ホームページ
ホームページへ