ラストサマー2

1999/03/25 SPE試写室
前作の生き残りはそのままに、新たなメンバーを加えた新作。
脚本家が変わって普通のホラー映画になった。by K. Hattori


 脚本家ケビン・ウィリアムソンが大ヒット作『スクリーム』に続いて書いた『ラストサマー』は、日本人には馴染みのない俳優ばかりが出演する平凡な青春ホラーと思われた。ところがアメリカでは、主演のジェニファー・ラブ・ヒューイットがTVの人気スターということもあって大ヒット。『スクリーム』同様、こちらも続編が作られてシリーズ化するようだ。邦題は単純に『ラストサマー2』と明快だが、原題は前作が「去年の夏、お前のしたことを知ってるぞ」だったのが、続編では「去年の夏、お前がしたことをまだ知ってるぞ」になっている。登場人物としては、前作で生き残ったジュリーと恋人のレイが引き続き登場。シリーズ映画の必須条件として、前作で死んだはずのカギ爪の殺人鬼が、再び不気味なレインコート姿で現れる。

 今回は物語の背景と主要人物だけを借りて、監督と脚本家には新顔が参加している。これはホラー映画としては、ごく普通の現象。『スクリーム』のように、続編を同じスタッフとキャストで純粋培養する方が、むしろ珍しいのだ。『ハロウィン』『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』などは、途中で何度もスタッフやキャストが変わっているし、シリーズが長くなると殺人鬼の設定まで変わってしまう。『ラストサマー』も5作目ぐらいまで作ると、レインコート姿のフィッシャーマンが砂漠に現れてるとか、地味な姿のまま場違いなファッションショーに飛び込むとかして、コメディ要素が多くなってくると思われる。ただし、今回はまだ2作目なので、そうしたハチャメチャはまったくない。むしろ都市伝説をベースにした正統派の青春ホラーとして、王道を行く伝統的な作りに回帰しているようにも思えます。

 スタンリー・キューブリックがつい先日亡くなりましたが、今回の『ラストサマー2』の下敷きになっているのが、キューブリックの『シャイニング』であることは明白です。『シャイニング』の舞台はロッキー山脈の深い雪に閉ざされた豪華ホテルでしたが、『ラストサマー2』の舞台はオフシーズンで客と従業員が引き払い、折からの嵐で本土との連絡が取れなくなったリゾート・ホテル。『シャイニング』には超能力を持つ黒人が登場しましたが、『ラストサマー2』にはブードゥーの呪術を使う黒人が登場します。両者の違いは、ホテルに閉じ込められている人間の数。『ラストサマー2』は大勢の人が死ぬ流血型のホラーなので、殺人鬼が主人公のもとにたどり着くまでに、死体の山を築かねばならない。そのためには、ある程度の人数が必要なのです。結局、わずかに残ったホテルの従業員たちは、主人公たちを驚かせる死体の山を演じることになります。不幸だね……。

 前作では主人公たちに交通事故の隠蔽工作という後ろめたさがあり、それが物語全体に暗い影を落としているのがユニークだった。今回はそうしたヒネリはまったくないので、単純にオバケ屋敷的な楽しみ方ができる。ホラー映画としては、まずまず及第点の内容です。

(原題:I STILL KNOW WHAT YOU DID LAST SUMMER)


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