ゴト師株式会社
ルーキーズ
THE MOVIE

1999/04/13 映倫試写室
メンバーが大幅に若返った人気シリーズの最新作。
脚本にまだまだ工夫の余地がある。by K. Hattori


 パチンコ漫画誌の人気連載作品を、根津甚八主演で映画化した人気シリーズ『ゴト師株式会社』のリニューアル・バージョン。今回はタイトルからもわかるように、主人公たちの年齢を大学生まで引き下げ、大学対抗パチンコ大会と、大手悪徳ホールと良心的な小ホールの戦い、主人公の学生とホールの看板娘の恋などを描いている。このシリーズの売りは、あの手この手でハイテク・パチンコ機に細工をする「ゴト師」の極秘テクニックにあるのだろうが、今回の映画ではそれがきちんと絵になっておらず、観ていて歯がゆい点も多かった。パチンコをネタにした青春ドラマや恋愛ドラマとしても、今ひとつ盛り上がりに欠ける展開。これは脚本が悪いと思う。

 悪どい大手ホールが再開発の予定されている小さなホールの乗っ取りをたくらみ、凄腕のゴト師集団を雇う。その陰謀を察知した学生パチンコ愛好グループが、引退したゴト師からテクニックを伝授されて、プロの技に対抗するのがクライマックス。こうした話なら、最後の決戦の前にプロの技がどれほど破壊力を持っているのか、あらかじめ観客に印象づけておいた方がいい。小さなホールがゴト師たちの手に掛かり、あっという間に閉店に追い込まれるエピソードを序盤でひとつ見せておくと、最後のスリルが増し、こうした卑劣なゴト師のテクニックに、素人集団がどのようにして対抗するかというサスペンスも生まれるはずなのだ。ゴト師のテクニックは今までのシリーズでさんざん描かれてきたことなのかもしれないが、1本の映画で、それをもう一度なぞっておくのも決して無駄なことではないと思う。

 主人公の学生が、元ゴト師の大学教授に才能を見込まれ、パチンコ愛好会にスカウトされたのが話の発端。しかし、なぜ彼にパチンコの才能があるのか、パチンコにおいて、才能とは何かという問題が、この映画では一切描かれていない。それは勝負運の強さであろうか、最後まで勝負を捨てないバイタリティだろうか、パチンコ台の癖を見抜く観察力だろうか。こうした説明がまったくないため、僕にはこの主人公が、調子いいだけの軽い男に見えてしまった。この男が、パチンコ以外にどんな美点を持っているかを描かないと、ヒロインと恋におちるくだりも、酔った勢いで何となくセックスしちゃったようにしか見えないぞ。このあたりは恋愛映画としては決まり事の部分なんだから、きちんと押さえてほしい。

 「30兆円巨大産業が、戦場と化す──!!」という大げさなうたい文句の割には、最後にやってることが大学生同士のパチンコ合戦というショボさ。これはまあ、よしとしよう。しかしそのショボい世界の中が、さっぱり充実していないのはどういうことだ。登場する人間たちが全員薄っぺらで、人間らしい生々しさをまったく感じさせてくれない。復讐したいとか、金を儲けたいとか、女にもてたいとか、そういう簡単な目的もなしに、ひたすらパチンコに精を出す男たちが、僕にはどうしても理解できない。たかがパチンコじゃないか!


ホームページ
ホームページへ