メッセージ・イン・ア・ボトル

1999/04/23 ワーナー試写室
ケビン・コスナーとロビン・ライト・ペン主演のラブ・ストーリー。
もう一歩のところで感動に結びつかない作品。by K. Hattori


 シカゴの新聞社でコラムニストのアシスタントをしているテリーサ・オズボーンが、マサチューセッツの海岸で拾った水色の瓶。中には1通の手紙が入っていた。それは、ひとりの男性が自分のもとから去っていった女性に宛てた熱烈なラブレター。どこの誰が海に投げ込んだのかわからないその手紙に、テリーサは強く惹かれる。「瓶の中の手紙(メッセージ・イン・ア・ボトル)」の話は新聞のコラムになり、読者からは手紙の差し出し人に関する情報が続々と集まってくる。手紙を出したのは、ノースカロライナに住むギャレット・ブレイクという男だ。テリーサは彼に会ってみることにした。

 原作はニコラス・スパークスの同名ベストセラー小説。製作・主演はケビン・コスナーで、ヒロインのテリーサを演じているのはロビン・ライト・ペン。コスナーは監督作『ポストマン』で郵便配達人を演じていましたが、今回は受け取る人のいない手紙を海に投げ込む、物静かな男を好演している。彼の代表作『フィールド・オブ・ドリームス』にも通じる、ごく普通の善良なアメリカ人男性です。ケビン・コスナーはちょっと泥臭い持ち味があるので、『ウォーターワールド』や『ポストマン』などの荒唐無稽なスーパーヒーローより、こうした地に足のついた役の方が似合うのです。ロビン・ライトの美しさは相変わらずですが、今回はこれでの硬質さが取れて、女優として一皮むけた感じです。『トイズ』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』の頃とは、比べものにならないぐらい、いい女優になりました。この映画は、彼女の代表作のひとつになることでしょう。

 監督のルイス・マンドキは、『ぼくの美しい人だから』や『男が女を愛する時』など、普通の男女がぎこちなく互いの愛を確認して行く物語を得意としている人。生活や日常の細やかな描写を積み重ねて、登場人物に我々の隣人としてのリアリティを与えられる人です。ただしこの監督は、出来上がった映画がひどく地味になるという欠点も持っている。『男が女を愛する時』なんて、メグ・ライアンとアンディ・ガルシアという2大スターが共演しているのに、ひどく地味な印象の映画になってしまいました。しかし今回はそんな監督のカラーが、しばしば突出しがちなケビン・コスナーの「俺様意識」を押さえ込んで、しっとりとした情感に変えています。

 と、映画の長所ばかりを書いてきましたが、僕はこの映画にぜんぜん感動できませんでした。テリーサが取材でギャレットを訪ねた際、それをきちんと告げないのはやはりフェアじゃないと思う。このあたりは『ユー・ガット・メール』のトム・ハンクスに一脈通じるところだ。また、肝心の恋愛描写にあまり説得力がなく、いつどの段階でテリーサがギャレットに恋心を感じ、ギャレットがいつテリーサを愛し始めたのか、その分岐点が明瞭になっていない。本人たちがそれをいつ意識し始めたかはともかく、観客側には彼らの恋が本物に見えないと、演じられているのはただの恋愛ゴッコになってしまうのだ。

(原題:Message in a Bottle)


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