こねこ

1999/05/12 メディアボックス試写室
子供の誕生日に買った猫が、ある日突然行方不明になった。
とにかくカワイイ。最後はホロリとするぞ。by K. Hattori


 ペット市場で縞柄の小さな子猫を手に入れた姉弟。ふたりは遊びも勉強もそっちのけで、愛らしい子猫に夢中になってしまう。お父さんは一目でこの子猫が気に入り、最初は迷惑そうな顔をしていたお母さんも、子猫の可愛らしい仕草を見ればデレデレ。子猫には「チグラーシャ」という名を付けられ、無事家族の仲間入りをはたします。でもヨチヨチ歩きの子猫は、好奇心旺盛で遊びたい盛り。家の中をあちこち探検しては、テーブルクロスを引っ張って花瓶を倒し、食器棚に潜り込んではカップをひっくり返し、仕事の書類を部屋中にまき散らしてそれとジャレつく始末。お父さんとお母さんは生活をかき乱されてご立腹ですが、子猫がトイレの躾を覚えたといっては、家族全員で大喜びしたりもするのです。

 僕は幼い頃に集合住宅で暮らしていたので、犬や猫などのペットは飼いたくても飼えなかった。ようやく一軒家に引っ越して僕と弟が最初にやったことは、近所で拾ってきた子犬を飼うことでした。この時は、すごく嬉しかった。だからこの映画を観ていると、子供たちが子猫を手に入れて喜ぶ様子が、まるで自分自身の昔の姿を見るように感じられます。犬と猫という違いはありますが、こうした気持ちは、似たような経験をしたことのある人なら誰でも理解できると思う。

 子猫は家族がちょっと目を離したすきに、家から外に飛び出して行方不明になってしまいます。それに気づいた姉弟と家族が、夜遅くまで近所中を探し回りますが、子猫はとうとう見つかりません。子猫の傍若無人な振る舞いに手を焼いていた両親も、いざ子猫の姿が見えなくなると寂しく感じます。それに何よりも、ひどく落ち込んでいる子供たちの姿を見るに忍びない。でもその頃、子猫はトラックの荷台に乗って、思いがけず遠くまで運ばれていたのでした。子猫は無事に、飼い主たちのもとに戻ることができるのでしょうか……。

 事前にどんな映画かまったく知らぬまま観たのですが、これは思わぬ拾いものでした。犬を主人公にした『ベートーベン』や『101』にも通じる動物映画で、子供から大人まで家族みんなが楽しめる娯楽作品。何と言っても猫たちがカワイイし、猫に対する人間たちの気持ちもよく描けています。猫が行方不明になって最後は戻って来るという、ただそれだけの話なのですが、中には大小の冒険がギッシリ詰まっていてハラハラドキドキの連続。こんな映画を観たら、特に猫好きの人でなくても、猫が飼いたくなってしまうことでしょう。

 映画の中に猫のサーカスが登場します。「猫は人間にこびない気ままな動物」という先入観があったので、犬なみに高度な芸をこなす猫にびっくり。何匹もいる猫の世話をする雑役夫を演じていたのは、この映画用に猫の調教を担当している人だそうです。この人なしには、この映画は作れなかったでしょう。

 猫好きは必見。長田弘の詩集「猫に未来はない」も素敵でしたが、この映画もそれに負けず劣らず素敵です。

(英題:THE KITTEN)


ホームページ
ホームページへ