エンカウンター3D

1999/05/21 東京アイマックスシアター
最新のアイマックス3D映像で学ぶ「3D映画の歴史」。
CGで作った3D映像はすごい臨場感。by K. Hattori


 アイマックスの3D映画は、迫力や臨場感の点では確かにすごいんだけど、あの特製ゴーグルをつけて映画を観ていると頭が痛くなって……と思っていたら、今回の映画はそれほどでもなかった。この映画は今までの3D映画を越えた「EX-3D」という触れ込みだが、本当にそうした規格があるのかは不明。特徴としては、実写の人物以外をすべてCGで描いていることだろう。たったそれだけのことだが、それによって頭痛の原因を大幅に減らすことができるのだ。

 今までの3D映画で頭が痛くなるのは、被写界深度というカメラのレンズに特有の遠近感が、人間の目の仕組みと一致しないことにあった。人間の目はどんなに暗い場所でも、基本的にはパンフォーカスなのだ。遠近感は左右の目がとらえた画像のズレとして、頭の中で認識される。人間は左右の目で同じ対象物を注視することで物を立体として認識し、その前後にあるものをブレた二重像として視界から追い出す。これが人間の目と脳の仕組みだ。3D作品でもなるべくフォーカスを深くするのだが、アイマックスの3Dカメラといえども仕組みは普通のレンズとフィルムである以上、被写界深度の範囲から外れたものは輪郭が淡くボケてしまう。

 人間の目は遠くから近くまで、瞬時にどこにでもピントが合わせられる。だがカメラとレンズが被写界深度の限界を持っている以上、人間の目と同じ完璧なパンフォーカス画面を作ることは難しい。おそらく、映画の中で製作者たちが観客に見せたい物と、観客が注視している物が完全に一致するなら、こうした限界もあまり気にならないのだろうが、人間の視線は気まぐれなものだ。大きな画面をあちこちさまよい、見せたい物以外の対象にまでチラチラと視線はさまよう。そこで目に入ってくるのが、被写界深度の前後にあるボケなのだ。肉眼では決して目にすることのない、レンズによって作られたボケが、視線をそこで強制的に遮断する。それによって、人間の視覚は強いストレスにさらされるのだろう。これを解決するのが、映画をすべてCGで作るという方法。CGなら観客の鼻先から無限遠まで、完璧にピントの合った画像が作れるというわけだ。

 この映画は「3D映画で学ぶ3D映像の歴史」だ。もともとは普通のドキュメンタリー映画にするはずが、ドラマ仕立てのエンタテインメント作品になった。洞窟の壁画やルネサンス絵画の遠近法にはじまり、ステレオ写真、モノクロやカラーの立体映画作品を経て、博覧会などでの立体映画全盛時代、そしてアイマックス3Dの最新映像まで、人間が作り出してきた3D映像の集大成。映写方式の違いや、カメラ間隔による対象物のスケール感の違いまで、じつにわかりやすく解説してくれる。解説者の博士とロボットの場面は、CG主体の最新3D作品。この場面の臨場感はすごい。僕は帰りの駅で階段を上っているとき、自分の目の前にあるのが現実なのか3D映像なのか、一瞬戸惑ったほどでした。

(原題:ENCOUNTER IN THE THIRD DIMENTION)


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