チャカ2

1999/06/01 東映第2試写室
竹内力が孤高のヒットマンを演じるシリーズ作品の第2弾。
ヒロインの遠山景織子が素晴らしい。by K. Hattori


 昨年公開された『チャカ/LONELY HITMAN』と同じ主人公が登場するシリーズ第2弾作品だが、前作で主人公が死んでいるので、この作品の中では時間が少し戻っている勘定。もっとも前作と共通しているのは竹内力扮するヒットマン・島と、菅田俊演ずる同輩のヤクザだけ。前作はかなりリアリズム指向の実録調ドラマだったが、今回はもう少しファンタジックな青春ドラマ風。主人公はあくまでも島だが、物語を引っ張って行くのは彼と出会うひとりの若者と、幼なじみだった若い女だ。描かれている内容も、義理人情のしがらみといったドロドロしたものではなく、暴力の世界に生きる男に魅力を感じる若者たちの、心の渇きのようなもの。物語の基本は若い男女と島の三角関係であり、暴力はその関係を極限状態にまで追い込んで行く役目しか持っていない。

 監督は前作と同じ渡辺武。この監督の暴力描写には定評があるが、今回は映画の冒頭、ハンバーガーショップでの銃撃戦に見応えがあった。5,6人の襲撃者が島を取り囲んだ時、島は迷うことなく銃を抜く。狭い店内で身体と身体を密着させるようにして始まる銃撃戦は、ガンファイトというより一種の立ち回り。手を伸ばせば届く距離にいる敵を次々に撃ち殺す様子は、時代劇に登場する剣豪を思わせた。銃に薬莢が詰まって使えなくなる描写は、斬り合いの最中に刀が折れたようなものです。この映画には他にもいくつか印象的なガンアクションがありますが、後半はアクションを見せるというより、ドラマのクライマックスとしての役目が大きくなる。見せ物としてのアクションは、冒頭のハンバーガーショップにとどめを刺すと思う。ちなみにこの場面では、大和武が嫌味な店長役でゲスト出演している。

 この映画でヒロインの透子を演じているのは遠山景織子。僕は彼女の出演映画をほとんど全部観ているが、最近は初期のとげとげしさが消えて、雰囲気が丸くなってきた。(太ったという意味ではない。念のため。)しかし今までずっと、薄幸の少女、病弱な少女、過去に曰く因縁がありそうな少女などを演じてきた女優なので、今回の透子という役も少し正体不明に見える。それが、無名の若い女優が演じたのでは決して出せない味を出しているのだ。これはキャスティングが生み出した力。台詞や芝居では何も説明されていないが、遠山景織子が透子を演じると、彼女が過去に1度や2度は人に言えない苦しみや修羅場をくぐってきたように見えて、ヒットマンの島に惹かれる気持ちにも説得力が生まれるのだ。

 明るいばかりが取り柄の最近の若い女優の中で、遠山景織子が持つ「暗さ」は得難い持ち味になっている。この暗さは、例えば羽田美智子が持っていた「地味さ」とは別種のもの。使いようによっては、暗い情念を感じさせる女優として大輪の花を開かせる可能性があると思う。遠山景織子という個人がどんな人なのかは知らないが、彼女に「暗さ」が付いて回るのは『高校教師』以来の宿命だ。これからも暗さに磨きをかけてほしい。


ホームページ
ホームページへ