エントラップメント

1999/06/09 FOX試写室
キャサリン・ゼタ=ジョーンズの活躍ぶりにショーン・コネリーもたじたじ。
ハイテク泥棒の華麗なテクニックが最大の見どころ。by K. Hattori


 ショーン・コネリーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演のサスペンス映画。裏業界ではその名を知らぬ者のいない美術品泥棒マックは、完璧な仕事ぶりで決して警察に尻尾をつかまれない。美術品泥棒は盗品を故買商経由でもとの持ち主に売りつけ、盗難の被害者は保険金でそれを買い戻す。この手の犯罪で一番被害を被るのは保険会社なのだ。マックの仕事ぶりに業を煮やした保険会社は、女性調査員ジンを使ってマックを罠にかけようとする。マックに美味しい餌をちらつかせて仕事をさせ、その現場で動かぬ証拠をつかもうというのだ。ジンがマックに依頼したのは、古代中国から伝わる黄金のマスク。だが長年一匹狼で仕事をしてきたマックは、おいそれとジンの言葉を信用しなかった……。

 『マスク・オブ・ゾロ』のエレナ役で見事な剣さばきを見せたゼタ=ジョーンズが、往年のアクション・スター、ショーン・コネリーを相手役に、華麗なアクション女優ぶりを見せている。『マスク・オブ・ゾロ』ではあくまで脇役だった彼女だが、今回の映画ではコネリーと並ぶ主役のひとりに昇格。飛んだり跳ねたり、じつに活発なアクションを見せてくれます。共演はビング・レイムスとウィル・パットン。パットンは『この森で、天使はバスを降りた』にしろ『ポストマン』にしろ、ネチネチと回りくどく主人公をいじめる役がうまい。しかもこの人のイジメには嫌味がない。悪意が表立ってこない、ちょっとお人好しなところがある。今回もセクハラすれすれの上司をじつに巧みに演じています。

 この映画の見せ場は、やはり華麗な盗みのテクニック。冒頭のレンブラント強奪で、まずは度肝を抜かれます。特に驚いたのは、高層ビルの窓からどうやって中に侵入するかという部分。今までにいろいろな泥棒映画がありましたが、今回のテクニックは初めて見ました。中盤のクライマックスは、ジンがマックを捕らえる罠に使う、黄金のマスクの強奪。これは準備段階からたっぷりと時間をかけて描写し、一部の隙もない盗みのテクニックをたっぷりと見せてくれる。準備期間中は「何をしているのだろうか?」と疑問に思っていたひとつひとつの動作が、現場でいちいち意味を持ってくる場面には驚きました。「なるほど、そのための準備か!」という瞬間は、パズルが解けたときのような快感すら感じます。

 監督は『ジャック・サマースビー』『コピー・キャット』のジョン・アミエル。この監督は謎解きのツボがいちいちはずれる人で、今回も騙し騙されるどんでん返しのポイントが決まらず、少しばかり腰砕け気味になる場面が数カ所ありました。「ええっ、そうなの?!」という驚きが「そういえばあの時……」という伏線とすぐつながらず、「そうなの?!」が「ホントかなぁ」という歯切れの悪い疑惑として残される場面があるのです。これは監督の狙いではないはずなので、単にヘタクソってことなんじゃないだろうか。ゼタ=ジョーンズが素晴らしすぎて、コネリーの影が薄くなったのも残念。

(原題:ENTRAPMENT)


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