パラサイト

1999/06/17 GAGA試写室
古典的侵略SFの現代風アレンジだが、ややパンチ不足気味。
ロバート・ロドリゲスならもっと無茶をやれ! by K. Hattori


 『デスペラード』『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のロバート・ロドリゲス監督が、『スクリーム』『ラストサマー』の脚本家ケビン・ウィリアムソンと組んで作ったSFモンスター映画。人体に寄生する謎の生命体が増殖し、小さな町がエイリアンに支配される。元ネタはジャック・フィニー原作の古典的な侵略SF映画『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』。ウィリアムソンは『スクリーム』の時と同様、過去の映画や小説に敬意を示しつつ、現代の高校生たちの奮闘ぶりを描いていく。

 エイリアンの侵略に気付き、団結して戦おうとする高校生たちの中に、事情通のオタクがいて様々なアドバイスをするのは『スクリーム』と同じ。SFオタクの高校生は脚本家ウィリアムソンの分身とも言える存在だが、この映画ではそれを女性にしているところにヒネリがある。高校生グループの中にはもうひとり、運動も勉強もからきしダメだが逃げ足だけは早いという、いじめられっ子のカメラ少年が出てくる。監督のロドリゲスは、むしろこちらに感情移入しているのかもしれない。

 この映画、物語そのものは大したことがない。人々が知らないうちにエイリアンの侵略が始まり、気付いた一部の人たちがそれに対抗するという、1950年代風の古典的な侵略SFだ。『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』や『未知空間の恐怖/光る眼』など、いくつかの映画が古典になっているし、それぞれリメイク版も作られている。ケビン・ウィリアムソンがやろうとしたことは、この古典的なストーリーに豊富なパロディと引用の装飾を施して、『スクリーム』のSF版を作ることにあったのではないだろうか。だが残念ながら、この映画ではそれに成功していない。劇中で『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』やハインラインの「人形つかい」について言及したり、『E. T.』や『MIB』『X-ファイル』などのタイトルを出したりしているが、アイデアはそこまでだった。字幕に生きていないだけで、じつは台詞の中に細かなネタが組み込まれている可能性もあるが、少なくとも今回観た限りではわからなかった。

 ロバート・ロドリゲスの手堅い演出が、逆にこの物語の面白さを殺してしまった可能性もある。ストーリー展開は決まり切ったパターンを意図的になぞっているのだから、演出面ではもっとハッタリを利かせ、物語をぶち壊すスレスレまで持っていった方が面白かった。『デスペラード』や『フロム・ダスク・ティル・ドーン』ではサービス過剰気味の演出を見せていたロドリゲスが、今回はやけにおとなしいのは誤算だった。演出に破綻がないということは「上手さ」なのかもしれないが、それによって監督本来の持ち味を失っては意味がない。

 子役時代から何本もの主演作を持つイライジャ・ウッドが、高校生たちのひとりを演じているのに驚いた。昔は明るく爽やかな典型的「いい子」だったのに、『アイス・ストーム』とこの映画はちょっとヘンだ。彼も役者として難しい年頃なのかもしれないね。

(原題:THE FACULTY)


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