ピーターラビットと仲間たち
ザ・バレエ

1999/06/25 シネカノン試写室
ビアトリクス・ポターの人気絵本をロイヤル・バレエ団がバレエ映画化。
1971年に製作された作品だが古さは感じない。by K. Hattori


 世界中の子供と大人たちに愛されているビアトリクス・ポターの「ピーターラビットの絵本シリーズ」を、ロイヤル・バレエ団の出演、フレデリック・アシュトンの振付、レジナルド・ミルズ監督によって実写映画化した1971年のイギリス映画。人気者のピーターラビット、ハリネズミのティギーおばさん、アヒルのジマイマとキツネ、子豚のピグリン・ブランド、カエルのジェレミー・フィッシャー、ネズミやリスたちなどが、ポターの描いた絵そのままの姿で登場する。これはバレエダンサーが精巧に作られたマスクをかぶって踊る、一種の人形劇です。バレエなので台詞は一切なく、ストーリーはすべて踊りで表現されている。30年近く前の映画だが、マスクはかなり精巧に出来ていてびっくり。

 原作が古典的な絵本ということもあり、この映画はイギリスで公開されたとき大ヒット作して、バレエ映画の古典になりました。日本でも1978年に公開されています。映画の製作期間は3年。もともと映画用に企画されたものですが、後に舞台作品にアレンジされ、今ではロイヤル・バレエ団の人気レパートリーになっているといるといいます。映画の原題は『ビアトリクス・ポター物語』で、これはバレエ映画の古典『ホフマン物語』をふまえたものになっているのかもしれません。監督のレジナルド・ミルズは、フランコ・ゼフィレッリの『ロミオとジュリエット』では、アカデミー賞候補にもなっています。パウエル&プレスバーガーの『赤い靴』や『ホフマン物語』でも編集を担当していますから、もともとバレエ映画に縁のある監督なのです。

 ポターの絵本のキャラクターは、CMやキャラクター商品などで広く親しまれていますが、ポターの原作を実際に読んだことのある人は少ないと思う。一時期児童文学にかぶれた僕も読んでない。そんなわけで、この映画に登場するエピソードの数々も、僕には馴染みのないものばかり。それでも何となく、話の筋立てはおぼろげながら伝わってくる。週末でかなり疲れていたため、所々で睡魔にも襲われたが、これは僕の個人的な事情であって映画が面白くないわけではない。僕はネズミのダンスが好きで、眠くなってきてもネズミが踊り出すとハッとして画面を眺めていた。カエルもなかなか面白い。

 映画の中には、原作者のビアトリクス・ポター本人も登場し(演じているのは女優さん)、絵本を作るに至った経緯が簡単に紹介されます。また物語の舞台になっている湖水地方の美しい風景がロケーション撮影され、舞台芸術としてのバレエでは絶対に味わえない、空間的な広がりを感じさせます。僕はダンスには門外漢で技術的なことなどはまったくわかりませんが、カエル、ネズミ、ウサギ、ネコ、ブタなどが人間と同じ衣装を着て歩き回るというポターの絵本の世界を映像化するには、バレエという非日常の空間を設定するしかないのかもしれない。台詞のない映画なので、世界中どこの国の人が観ても同じように楽しめるはず。なかなかに面白いです。

(原題:TALES OF BEATRIX POTTER)


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