ファミリー・ゲーム
〜双子の天使〜

1999/07/12 ブエナビスタ試写室
児童文学の傑作「ふたりのロッテ」をディズニーが再映画化。
面白い、笑える、泣ける。でも不満な点もある。by K. Hattori


 「エミールと探偵たち」「点子ちゃんとアントン」などで知られる、ドイツの児童文学者エリッヒ・ケストナーの傑作「ふたりのロッテ」の実写映画化。この原作は1961年にディズニーで『罠にかかったパパとママ(原題:THE PARENT TRAP)』というタイトルで映画化されており、その映画に関わった脚本家デビッド・ウウィフトの名前も、今回の映画にクレジットされている。つまりこの映画は「ふたりのロッテ」の映画化と言うより、『罠にかかったパパとママ』の再映画化なのだ。だから当然、タイトルもまったく同じ。僕はこの原作が大好きで、子供の頃から何度も読んでいるし、1994年にドイツで映画化された『ふたりのロッテ』も大好き。今回の映画のもとになった『罠にかかったパパとママ』こそ観ていないものの、物語の流れはすっかり飲み込んでいる。でも僕はこのお話が好きなので、何度でも楽しめる。今回もワクワクドキドキ、時にクスクス笑い、時にホロリとしながら、最後までたっぷり楽しめました。

 両親の離婚で10年前に生き別れになっていた双子の姉妹が、偶然サマーキャンプで再会。ふたりは自分たちの出生の秘密を突き止めるや、キャンプ終了時に入れ替わって帰宅。バラバラになった家族がひとつになるため、なんとか両親を再婚させようとするという物語だ。見どころは3点。第1はサマーキャンプでふたりが再会してから、互いが双子の姉妹だと気付くまでのドラマ。第2は互いに入れ替わって帰宅したふたりが、正体を隠し続けて生活するスリル。第3はふたりの正体が親にばれて、家族が一同に再会する大団円。ドイツ版『ふたりのロッテ』はキャンプの場面がいまひとつだったのですが、『ファミリー・ゲーム』はこの導入部がじつに楽しい。顔かたちも背格好もそっくりなふたりが、ライバル関係から親友になり、やがて姉妹であることに気付くまでを、楽しいエピソードと起伏に富んだ演出で見せてしまう。

 しかし中盤は少しだらける。原作でもドイツ版『ふたりのロッテ』でも、性格の違うふたりの姉妹が入れ替わることで、さまざまな事件が起きるのが中盤のポイント。内向的でおとなしい少女が、サマーキャンプの後から突然活発で乱暴な女の子になる面白さだ。ところがこの『ファミリー・ゲーム』では双子の性格が似通っているため、入れ替わりで生じるトラブルに面白みが少ない。違うのが言葉遣いだけとは、なんとももったいない。

 最大の山場は双子がどうやって両親によりを戻させるかなのだが……。ここはダラダラ長いばかりで、そのわりには説得力がない。両親を演じているデニス・クエイドとナターシャ・リチャードソンがきちんと「恋する表情」を見せているのだから、説明なんか抜きにして「ふたりはまだ愛し合ってました」で済ませて構わないんだけどな。へたにいろいろと説明をしたために、かえって家族が再生へと向かう勢いに水を差すことになってしまったように思う。最後の別れの場面をもっと痛々しく演出しないと、ラストシーンが生きてこないよ。

(原題:THE PARENT TRAP)


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