劇場版
カードキャプターさくら

1999/07/28 松竹試写室
ゲイ・テイスト満載の人気テレビアニメ番外編は香港が舞台。
作画レベルは非常に高い。話もまずまず。by K. Hattori


 テレビアニメの映画化らしいのですが、僕はテレビ版を未見。しかし映画版は観ていてドキドキしちゃいました。いや〜、面白いです。何が面白いって、お話やキャラクターの魅力以前に、設定や雰囲気が非常にゲイ・ムービーっぽいというか、“ヤオイ”的な匂いがプンプンするのにビックリしちゃいました。主人公の木之本桜は不思議な力を持った普通の小学生なんですが、お兄さんの桃矢(とうや)と親友の雪兎(ゆきと)の関係がかなりあやしげ……。桜のクラスメート大道寺知世は、桜に手製の服を着せてはビデオを撮りまくり、恍惚とした表情を浮かべるレズビアン。桜は雪兎に恋をしているようですが、兄との関係を知ったらショックだろうなぁ……、などといらぬ心配をしてしまいました。香港からの転校生、小狼(シャオロン)は極度のマザコンで、やっぱり雪兎が好きなんだよね……。テレビ版や原作はどうなっているのか知りませんが、映画版では桜の父だけが登場して母は出てこない。小狼の母親や姉は出てくるけど、父親は出てこない。親子関係が非常に希薄なドラマです。これはたぶん意図的なものでしょう。

 商店街の福引きで香港旅行を当てた桜が、兄の桃矢、その親友の雪兎、クラスメートの知世と4人で旅行に出かけ、そこで巨大な力を持つ幽鬼と戦う物語です。かつてクロウ・リードと幾度も戦いを繰り広げた女占い師が、1冊の本の中に自分の思いを封じ込め、その力がクロウ・リードの力を継承する桜を呼び寄せたという設定。女占い師がじつはクロウ・リードを愛していたというオチはともかくとして、この映画の中では主人公と敵役だけが純粋なヘテロ・セクシャルというのが面白い。ドラマの中核には男と女の純愛があって、その周囲では男同士・女同士の恋愛感情がひしめき合っている。

 物語は『カードキャプターさくら in チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』ですけど、大量の水を使ったスペクタクルシーンや、高層ビルが林立する香港の夜景をバックにした空中戦などは、ツイ・ハークの活劇映画をジャパニメーションでボリュームアップしたような大迫力。工事中のビルに満たされた海水が一気にあふれ出す場面などは「おお!『タワーリング・インフェルノ』ではないか!」と嬉しくなってしまう。水が巨大な竜のようにうごめく場面は、懐かしの『幻魔大戦』だぞ。こうした最新映画の中に、昔の映画やアニメと同じ匂いを感じると、無性に嬉しくなってしまう私はオジサン……。

 音響はドルビー・デジタルになっていて、試写室の中で音がグルングルン回ります。最近は実写邦画より、アニメの方がはるかに音に対しては贅沢な作りになっている。これはもちろん、実写映画と違ってアニメには同録がないため、音を自由にミキシングできることもあるんですが、それ以上に重要なのはDVDの登場でしょう。アニメのソフトは発売数がある程度読めるマーケットなので、音に凝っても後からそれがきちんと回収できるし、自宅でそれを楽しむユーザーも多いのです。


ホームページ
ホームページへ