プリティ・ブライド

1999/08/03 イマジカ第1試写室
『プリティ・ウーマン』のスタッフとキャストが再集結したラブコメディ。
物語にスピード感と切れがない。退屈です。by K. Hattori


 主演はジュリア・ロバーツとリチャード・ギア。監督はゲーリー・マーシャル。音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。これらのスタッフ、キャストはすべて大ヒット作『プリティ・ウーマン』と同じ顔ぶれ。原題はともかく邦題も『プリティ・ブライド』に決まり、この映画は《『プリティ・ウーマン』のヒットよ再び!》という戦略商品になっているわけです。しかし、同じ顔ぶれを揃えれば、同じぐらい面白い映画になるとは限らないわけでして……。僕は1時間55分の上映時間で、ちょっと退屈してしまいました。つまらない話ではありませんが、こんなにたっぷり時間をかける物語だとはとても思えない。古典大好き職人肌のロン・ハワードなら、この話を1時間45分でまとめたでしょう。ルビッチなら1時間30分の映画にしたはずです。

 ネタに詰まった新聞記者アイクが、酒場で知り合った男に取材して書いた1本のコラム。それは結婚式から何度も逃走を繰り返す「逃げる花嫁」マギーの物語だった。アイクはマギーを男心をもてあそぶ悪女だと断定するコラムを書いたのだが、その内容は一方的で一部事実に反する部分もあった。これに抗議したマギーの手紙が原因で、アイクは新聞社を首になる。しかし転んでもただでは起きない記者魂。アイクは「逃げる花嫁」の実態を探るべく、4度目の結婚式を目前控えたマギーを密着取材することにした。ところが実際のマギーは、悪女という印象とは程遠いチャーミングな女性だった……。

 とにかく導入部からして映画のテンポが悪い。登場人物の紹介も手際が悪いし、物語が核心に入ってくるまでの時間も長すぎる。主人公アイクがコラムを書き上げるまでは、もっとピッチを上げられるはずだ。馬に乗って走るウェディングドレスの花嫁をタイトルに持ってきたのは悪くないが、ジュリア・ロバーツの顔をここで見せてしまったのはマズイ。ここでは『フィッシャー・キング』の赤い騎士よろしく、馬に乗って森の中を駆けて行く花嫁を神秘的でミステリアスな存在にしておいた方がいいと思う。そうすることで、コラムで描写された神話的な悪女像と、実際のマギーの落差にアイクが驚く展開に面白味が出てくるはずだ。

 マギーが結婚式から何度も逃げ出すのはなぜなのか? それがこの映画最大のミステリーだ。アイクの取材も、その謎を解くことが目的だ。しかし「逃げる花嫁」の気持ちは、当のマギーにもよくわかっていない。アイクはマギー周辺を丁寧に取材することで、マギーが心の中に持っている不安や結婚への憧れをあぶり出していく。しかしこの映画では、こうした謎解きの描写が弱い。だから最後にマギーが自分の気持ちを告白する場面も、力強さに欠ける物になってしまった。残念だなぁ。

 話のアイデアはともかくとして、脚本の詰めや演出の切れが甘すぎる映画だと思う。役者はがんばっているけど、この脚本と演出では足元がぬかるんでいる中で全力疾走させられているようなものです。

(原題:Runaway Bride)


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