ナビィの恋

1999/08/18 メディアボックス試写室
沖縄の小島を舞台にした、壮大なスケールの小さなラブコメディ。
恵達老人を演じた登川誠仁は映画初出演だとか。by K. Hattori


 沖縄の小島を舞台にした、不思議なラブコメディ。ここ1,2年、日本映画界はちょっとした沖縄ブームで、死ぬほど退屈だった『BEAT』をはじめ、『生きない』『青い魚』『豚の報い』『夢幻琉球・つるヘンリー』など何本かの映画を僕も観た。だが今回観た『ナビィの恋』は、その中でも一番面白いと太鼓判を押しちゃう。(『青い魚』も捨てがたいけど……。)沖縄方言の大らかさ、登場する人々の奇妙さ、土着の文化とアメリカと日本がごっちゃになった奇妙奇天烈な文化、夢とも現実ともとれるファンタジー。40分もあれば語れるであろう単純な話に、余分な枝葉がたっぷり付いた1時間32分の長編映画。このだらけた感じが、見事なバカンス気分を生み出してくれる。こんな話は、タイトにキリキリ描いても面白くない。このぐらい大らかに、たっぷりと時間をかけて描くから面白さが出てくる。

 物語の舞台は、沖縄本土から少し離れた粟国島。主人公の奈々子が、本土からこの島に戻ってくるところから物語がはじまる。乗客を乗せた小さな船が、若い船長の歌う「ひょっこりひょうたん島」のテーマ曲にあわせ、波をスイスイスイスイかき分けていくオープニング。この音楽ひとつで、つかみはOK! 船にはバックパッカーの福之助と、伊達な白スーツの老紳士が同乗している。その老紳士こそ、60年前に奈々子の祖母ナビィの恋人だったサンラーだ。

 物語にはふたつの三角関係が描かれている。どちらも、女性ひとりに男性ふたりの関係だ。ひとつは主人公・奈々子と島を訪れた風来坊・福之助の恋に、奈々子に想いを寄せる婚約者(?)のケンジを加えた三角関係。もうひとつは奈々子の祖母ナビィと、60年ぶりに島に現れた元恋人サンラーと、ナビィの夫・恵達が加わった三角関係だ。映画のタイトルからもわかるとおり、この映画の中で大きく扱われているのは、祖母ナビィとサンラーの恋の行方。60年ぶりに現れた恋人に、老婆が心を動かされ、その夫である老人は心穏やかでいられない。この映画の面白さは、「今さらなんだ」と一蹴されてしまいそうな話を大真面目に描きつつ、普通ならドロドロの修羅場になりそうな三角関係をさらりと解消させてしまうこと。ショーン・ペン主演の『シーズ・ソー・ラヴリー』もかつての恋人が一家の主婦をさらっていく話だが、『ナビィの恋』はそれよりずっと物語のスケールがでかい。口数の少ない映画だが、そこに描かれている愛情は、ずっとずっと深いように思える。

 主演は『ひみつの花園』『学校の怪談3』の西田尚美と、『バウンス ko GALS』『dead BEAT』の村上淳。だがこの映画の中で一番光っているのは、ナビィを演じた平良とみと、恵達を演じた登川誠仁だろう。特に恵達のキャラクターは最高。頓珍漢なことをずけずけと言ったり、英語と日本語と沖縄方言をチャンポンにして「ランチはトゥエルブ・サーティーに持ってきてくれればいいよ」などと話す様子には笑ってしまいます。


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