この映画は、'59年にカナダで製作された前後編1時間足らずのドキュメンタリー。前半の『Glenn Gould Off the Record』では、カナダでのグールドの生活ぶりや練習風景、彼の音楽論などがスケッチ風に描かれ、後半の『Glenn Gould On the Record』では、ニューヨークのCBS録音スタジオでバッハの「イタリア協奏曲」を録音する姿が描かれている。この頃はまだデビューから間もない頃で、グールドはコンサート活動も行っていた。しかし「演奏会と録音とどちらが好きか?」というインタビュアーの質問に「録音だ」と即答する場面や、映画後半の録音への熱中ぶりからは、彼がやがてスタジオにこもってしまうことが見て取れる。またスタッフから「なぜニューヨークに住まないのか?」とたずねられた時の答えにも、彼が一生カナダに住み続けた原点が見えるような気がする。いろんな意味で、貴重なドキュメンタリー映画だと思う。