歌う色男、
愛・ラブ・パラダイス!

1999/09/09 GAGA試写室
愛妻家のインド人実業家がネパールでも別の少女と結婚した!
中国の古典小説にも通じる大らかさを感じる。by K. Hattori


 『ムトゥ/踊るマハラジャ』で火がついた日本のインド映画ブーム。20数年前の香港カンフー映画ブームの時と同じく、これからは「インド映画は商売になる!」とばかりに玉石混淆さまざまな映画が日本で公開されるのでしょう。どんな国のどんな映画も、傑作ばかりということはあり得ない。たくさんの玉を見つけるためには、たくさんの石を見させられることも覚悟しなければならない。まずはたくさんのインド映画が、きちんと日本に紹介されるルートを作ることが大切です。そんな中で、『シャー・ルク・カーンのDDLJ/ラブゲット大作戦』のインドセンターは今後も何本かのインド映画配給予定を立てているし、この『歌う色男、愛・ラブ・パラダイス!』の配給をしているムンバイストリートは、アメリカのインド映画配給会社と提携して、日本国内でのインド映画ビジネスを立ち上げようとしている。「ブームに乗じて一発当てちゃろう!」という下心や野心があるのかもしれませんが、なにそれでも構わない。玉石混淆の原石の山が目の前にあってこそ、中から光り輝くダイヤモンドが見つかるというものです。

 でもってこの『歌う色男、愛・ラブ・パラダイス!』ですが、これは玉石混淆の「玉」の部類です。仲のよいアルンとカージャルの夫婦には、いまだ子供が生まれない。孫が欲しくてしょうがないアルンの父は、息子に新たな嫁取り勧めるが断られる。業を煮やした父親は、病気のフリまでして強引に嫁取りを承知させる。アルンは仕事でネパールに行き、殺されそうな子山羊を助けようと泣き叫ぶ少女マニーシャと知り合う。現地の習慣を知らないアルンは、奇妙な行きがかりからマニーシャと結婚するハメになる。妻を裏切るぐらいなら死んだ方がましと言い切るアルンだが、マニーシャの真摯な気持ちに接して彼女を妻にしようと決意する。結婚はしたものの彼女を家に連れ帰るわけにはいかず、アルンはひとりでインドへ帰っていく。やがてインドのアルンのもとに、マニーシャが妊娠したという知らせが届いて……。

 日本で同じことをやれば重婚罪ですが、インドには重婚禁止の法律がないのだろうか。それがずっと最後まで引っかかりましたが、それ以外はまずまず楽しめる映画です。ネパールでロケした、民族色豊かなミュージカル場面も楽しい。2時間13分という上映時間は、インド映画にしては短すぎるようなきもしますが、これはアメリカの会社で短くしているのかな? 映画のあちこちに、話をかいつまんだ形跡がある。

 僕はこの物語から中国の古典「聊斎志異」を連想した。子供のいない夫婦のもとに異界から花嫁が現れ、跡取り息子を生んでくれるという話が時々あるからです。中国の場合、異界とは仙界や冥界や幽界です。花嫁は狐や仙女や幽鬼です。この映画の中では、ネパールという場所が異界の役割を果たし、天真爛漫なネパール人の花嫁が子供を授けてくれる。話の発想が、中国もインドも同じなんです。やはりインドもアジアなんですね。

(原題:Gharwali Baharwali)


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