LOVER GIRL

1999/10/21 メディアボックス試写室
マッサージ・パーラーで働き始めた16歳の少女ジェイクの物語。
Hな映画を期待してもダメですよ〜だ。by K. Hattori


 映画祭が近づくと、映画祭がらみの試写が増えて大変。この映画も東京国際映画祭の協賛企画「カネボウ女性映画週間」で上映される作品で、製作が『ガス・フード・ロジング』『グレイス・オブ・マイハート』のアリソン・アンダース。脚本・監督のリサ&ジョー・シラキューズは映画界では珍しい夫婦監督。脚本家と監督、製作者と監督、夫婦で別々に映画を撮っている例などはありますが、夫婦で共同監督する例は珍しい。国際女性習慣の出品作品は女性監督のものに限定されているのですが、男性監督が登場したのは初めてだそうです。

 母親が男と家出して、ひとりぼっちになってしまった16歳の少女ジェイクは、都会で一人暮らしをしている姉を訪ねる。だが唯一の肉親である姉ダーリーンは、「あたしは15で家を出たわ。あんたもがんばんなさい。じゃあね」と玄関先で追い出されてしまう。途方に暮れたジェイクを1泊だけという約束で部屋に泊めたのは、マッサージー・パーラーに勤めるマーシーという女性。帰る家のないジェイクは、法律違反を承知でマッサージ・パーラーで働き始める。店での名前はキャンディ。マーシーの部屋で他の女性たちと共同生活を始めた彼女は、あっという間に大金を手に入れる。

 僕は風俗関係の情報には疎いんですが、マッサージ・パーラーというのは、半裸の女性が本番なしで抜いてくれるサービスだそうです。マッサージとは言いながら、これは立派な性風俗、射精産業ですね。普通はこの手の職業に就く人たちを、まともな生活から堕落した人たちだと考えがちですが、この映画ではその逆のケースが出てきて目から鱗が落ちました。店で働いている女性のひとりが、「この仕事ができなくなったら街娼に逆戻りだ」というような台詞を言うのです。学費を稼ぐために働いている女性もいるし、主人公ジェイクにしたって、マッサージ・パーラーの仕事が恥ずかしいことや悪いことだなんてちっとも思っていない。フェミニズムだなんだの難しい理屈は抜きにして、僕はこうした性産業の描き方が新鮮に思えました。

 主人公ジェイクを演じたタラ・サブコフが可愛いのはいいんだけど、とても16歳に見えないぐらい幼い感じ。他の女性陣に比べると、背も低いしやせっぽちなのに加え、話の筋立てからして幼さを強調しているのでしょうけど……。これはもはや「ロリコン」に近いぞ。

 よくある「疑似家族物語」の一種だけど、ジェイクとマーシーの関係が少しずつ変化して行く様子がうまく描けています。マーシーは最初ジェイクを厄介者扱いし、やがて姉と妹、母親と娘のような関係を経て、最後は親友同士になる。登場人物のほとんどは女性で、製作も監督も女性、いわゆる「女性映画」ではありますが、中身はきっちりとエンターテインメント。パルコとザナドゥー配給で、来年には日本公開されるそうです。観なかったからと後悔するような映画ではありませんが、観た後でちょっといい気分になれる映画でした。

(原題:LOVER GIRL)


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