ジャンヌ・ダルク

1999/10/25 SPE試写室
2時間40分の歴史大作だが、僕は残り30分時点でリタイア。
映画の前にはトイレに行っておこう。by K. Hattori


 リュック・ベッソンが作った2時間40分の歴史大作。ご存じ「オルレアンの乙女」こと、フランス救国の英雄ジャンヌ・ダルクの物語だ。じつは僕、今回この映画を最初の2時間しか観てません。途中でどうしてもトイレに行きたくなって、ジャンヌが逮捕されて裁判が始まった時点でリタイアしてしまいました。(本日の教訓:映画の前には必ずトイレに行っておくこと。)そんなわけで、今回の感想はあくまでも「最初の2時間分」に限定しての話になります。終盤の裁判シーンや焚刑の場面は映画のハイライトですが、そこを見落としているため多少歯切れの悪い感想になりますがご容赦を。なるべく早い段階で、全編を通してみるようにします。

 出演者はすごく豪華です。ジャンヌを演じているのは、『フィフス・エレメント』のミラ・ジョヴォヴィッチ。シャルル7世にジョン・マルコヴィッチ。その義母ヨランド・ダラゴンにフェイ・ダナウェイ。獄中に登場する謎めいた黒頭巾の男にダスティン・ホフマン。シャルルの家臣で、後に青髭として伝説になる猛将ジル・ド・レーにヴァンサン・カッセル。ところでこの映画、フランス人の監督がフランスの伝説的英雄を、英語の映画にしているんですけど、問題ないんでしょうかね……。

 ジャンヌ・ダルクは歴史上の人物なので、映画化するにあたっては、実在したエピソードの数々をどう解釈し、物語の中に当てはめて行くかがポイントになる。ジャンヌについては今も謎めいたところも多いのだが、その中でも特に大きな謎は、彼女が見たという幻やお告げの中身。今回の映画では、これをジャンヌの内面から沸き上がってきた彼女自身の声だと解釈している。つまり彼女は神の声ではなく「自分自身の内なる声」に従って行動する。天上から呼びかけられる「ジャンヌ」という声に合わせて、彼女の唇が動き、小さく「ジャンヌ」とつぶやく場面が用意されています。

 次に謎なのは、田舎からやってきた神がかりの小娘を、なぜ皇太子シャルルが信用して軍隊を与えるに至ったかという点。宮廷に現れたジャンヌは半信半疑の皇太子を別室に連れ込んで何事かを囁く。その途端、皇太子はすぐにジャンヌを信用してしまうのですが、その中身はまったく記録に残されていない。有力な説として、シャルルの出生の秘密について語ったとも言われていますが、実体は不明。今回の映画は、その点がちょっと弱い。

 映画は全体的に(と言っても最初の2時間だが)平板に塗り固められた印象。主人公ジャンヌの感情の起伏に合わせ、音楽がベッタリと途切れることなくかぶさり、ドラマのメリハリを減じている。ジャンヌを「普通の女の子」として描こうとするあまり、彼女が持っていたはずの圧倒的なカリスマ性まで奪ってしまった。思春期の女の子がヒステリーを起こしているだけでは、兵士たちはついて行かないんじゃないだろうか。オルレアン解放に至る大がかりな戦闘シーンも、途中でジャンヌが泣きべそかき始めてしまうのでは迫力半減だ。

(原題:The Messenger: The Story of Joan of Arc)


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