カーラの結婚宣言

1999/10/26 ブエナビスタ試写室
ジュリエット・ルイスが家族から自立して行く知的障害者を演じる。
監督・脚本・原案はゲイリー・マーシャル。by K. Hattori


 『ケープ・フィアー』で注目され、『カリフォルニア』『ギルバート・グレイプ』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』などでハリウッド・ナンバーワンの若手女優に成長したものの、最近はすっかり姿を見せなくなっていたジュリエット・ルイスの主演復帰作。軽度の知的障害を持つカーラという女性が、家族と離れて自立して行く様子を丁寧に描いている。監督・脚本のゲイリー・マーシャルは、つい先日『プリティ・ブライド』が日本公開されたばかりですが、僕はこの『カーラの結婚宣言』の方が面白いと思った。一方はロマコメで一方はドラマですから単純に比較してもしょうがないのですが、エピソードのきめ細かさではこちらの方が一枚上手かもしれない。マーシャル監督は人物造形に巧みな腕前を持っていますが、『カーラ』に比べると『プリティ』には平板なキャラクターが多いように思えます。例えば、ジュリア・ロバーツの元婚約者たちとかね……。

 知的障害を持つカーラは、子供の頃から家族と離れ、彼女のような子供を受け入れてくれる全寮制の学校で暮らしていた。学校を卒業し久しぶりに我が家に戻った彼女は、家族からの心のこもった歓迎を受ける。特に母親はカーラのことが可愛くて仕方がない。彼女は一度娘を手放した負い目を取り戻すかのように、あれこれとカーラに世話を焼こうとする。ところがカーラ本人は、高校卒業の資格を取るため職業訓練校に行きたいと言うのだ。母は大反対するが、他の家族の後押しで学校通いを始めるカーラ。彼女は学校で自分と同じ障害を持つダニエルという青年と出会い、彼がアパートで一人暮らしをしていると聞いて、自分も家族から独立したいと考える。

 学校の卒業、さらに上級の学校への進学、家から離れての一人暮らし、恋人の出現、そして結婚と、進む道筋そのものは普通の女の子と少しも変わらない。ところがカーラが知的障害を持っていることから、母親のエリザベスは娘が心配で心配でしょうがないのです。父親や姉たちは、カーラがカーラなりの生き方を見つけ、幸せになることを願っている。母もカーラの幸せを願いながら、自分がカーラより先回りして娘の幸せを見つけてやらねばという義務感に駆られているのです。

 知的障害を持つ人の社会的自立や、セックスや結婚についての問題など、生々しいテーマを描きながらも、映画そのものは生臭くなっていません。これは主人公テイト一家を、裕福な家庭に設定したことが大きい。テイト家は経済的にゆとりがあるから、家族全員がカーラのことを、家庭内の他の要素と切り離して考えることができる。生活が貧しかったりすると、知的障害者はもっと惨めな状態に置かれてしまうでしょう。映画はそうした普通の障害者の境遇を、ダニエルという人物に代弁させている。脚本を作る段階できちんと気配りしているのです。

 ジュリエット・ルイスはうるみがちな目がクルクルとよく動いて、じつにチャーミングでした。相手役のジョバンニ・リビージもがんばってますけどね……。

(原題:The Other Sister)


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