ブレア・ウィッチ・プロジェクト

1999/10/26 渋谷東急(試写会)
魔女伝説の取材中に行方不明になった学生たちは何を見たのか?
発見されたフィルムとビデオを編集した映画。by K. Hattori


 製作費が日本円にして数百万円という低予算自主映画でありながら、公開されるや口コミで大ヒットとなって公開規模を急遽拡大。アメリカで6週間も興業ベスト10入りし、製作費の2000倍以上を稼いだと言われているホラー映画が、ついに日本でも公開される。日本では松竹東急系で最初から全国公開されますが、はたしてアメリカ同様の大ヒットになるかどうか……。

 1994年。映画学校に所属する3人の若者が、メリーランド州の小さな町(旧名:ブレア)に伝わる魔女伝説についてのドキュメンタリーを企画する。映画の仮タイトルは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』。『ウィッチ(witch)』というのは魔女のことで、アメリカでは17世紀頃から各地でしばしば凄惨な魔女狩りが行われている。(その様子は映画『クルーシブル』や『プラクティカル・マジック』などにも登場する。)ブレアには18世紀末にエリー・ケドワードという魔女が現れたと言うが、真偽のほどは定かでない。ひとつだけ確かなのは、19世紀に入ってからもこの町ではしばしば不可解な事件が起こり、森の中で奇妙な事件や残虐な殺人事件が頻発することだ。これらの事件はすべて町に伝わる魔女伝説と結びつけられ、深い森は魔女の住みかとして人々から恐れられるようになっていた。学生たちはそんな魔女伝説の全貌を取材するため森に入り、そのまま行方不明になってしまう。それから1年後に発見されたのは、未現像の16ミリフィルムと8ミリビデオのテープ。そこには学生たちが森で体験した事柄が、すべて記録されていた。この映画は、警察に保管されていたフィルムとビデオを編集して、1本にまとめたものだ。

 登場人物は3人。映画の監督である女子学生ヘザー、カメラ担当のジョシュ、録音担当のマイク。彼らは森の中で魔女伝説にまつわるいくつかの場所を探索し、映像に記録する。だが一通りの撮影を終えて町に戻る途中で、道を見失ってしまうのだ。遭難した彼らは、そんな自分たちに向けてカメラを回し続けるのだが……。

 この映画の恐さは、自分の見知っている世界が少しずつ縮んで行く視界狭窄の恐怖だ。映画の撮影開始時点で、ヘザーたち3人は魔女伝説の全貌についてすべてを知っているつもりだったし、森の中の様子もすべて知っているつもりだった。伝説にまつわる町の歴史について下取材も済ませ、伝説の全貌についてすべてを理解し、すべてを見通していた。ところが森で迷い始めると、そうした見通しが立たなくなる。自分たちが知っていたことや信じていたことが、目の前の現実に次々と裏切られて行く。自分たちが今どこに向かっているのか、森の中で何が起こっているのか、まったく理解できなくなってしまう。確かなのは、今ここに自分が立っているということだけ。同行している仲間たちも信じられず、すべてが曖昧になってくる。こうなれば、パニックまであと一歩だ。

 よくできたフェイク・ドキュメンタリーで、全体の構成もよくできている。でも、日本でヒットするか?

(原題:The Blair Witch Project)


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