2002年6月の出来事


6月1日(土
 映画の感想を4本書き、レギュラーの週刊誌連載の原稿を入稿したところで手一杯。残りの仕事は明日以降か。間に合うのかなぁ。嫌な予感がする。
 夕方に近所のスーパーで買物。

6月2日(日
 午前中はCS。そのままビックカメラでテレビアンテナ用の部品を購入。マツモトキヨシでアスピリンと歯磨き粉を買い、銀座のタパス・タパスで胸焼けがするほどスパゲティを食べて帰宅。食べ過ぎたせいかやたらと喉が渇き、がぶがぶと水分ばかりをとる。いくら水(実際にはお茶だけど)を飲んでも渇きが癒えない。身体がだるくなる。少し仮眠。6時頃起きて、シャワーを浴び、コーヒーとパンの簡単な食事をすませる。
 S誌の仕事に取りかかったのだが、映画紹介1本とDVD紹介1本を書いたところで行き詰まった。残り1本の映画紹介は、思い入れが強すぎてどう書いていいのかわからない。 こういうときは無理せずに、別のことをする。締切はもう少し先立ったがK誌の原稿を書いて入稿してしまう。S誌の残りは明日の午前中勝負。(やっぱり少し不安だなぁ。)
 フランス映画祭横浜のマスコミ試写日程がメールで届いたのだが、映画祭会期中の日程と付き合わせると、全作品を観るためにはやはりほぼ毎日横浜まで通わなければならないようだ。月の後半は雑誌の締切がいくつも重なる上、今月はC誌の特集もあるからどうなることやら……。とりあえず試写で観られるだけ観ておいて、あとは出たとこ勝負かな。ああ、特集の構成も今日やろうと思っていて、結局手つかずだったなぁ。1週間が10日ぐらいほしい。

6月3日(月
 午前中にフランス映画祭の試写日程を組む。まずは映画祭の試写を優先してスケジュール帳にぶちこみ、それとかち合う試写については、ファイルから試写状を片っ端から抜き取ってしまう。あとはこの試写状のスケジュールとにらめっこしながら、空いた日に試写の予定を詰めていけばいいのだが、とてもそこまでやる気持ちの余裕がないのでこれは後回し。たぶん今週末ぐらいにまとめての作業になると思う。
 コンビニでぴあを買ってきたら、今週末公開の映画はわずか6本。助かりました。これでメルマガ編集は楽になる。楽になるとわかったらこの作業は夜に回し、まずはW誌の原稿の仕上げ。残っていた映画紹介の記事を書いていたのだが、8割ほど書いたところでまとまりが付かなくなって破棄。切り口を変えて2回ぐらい書いたのだがどれも半分ほどで挫折し、ようやく形になったのは11時頃。もうギリギリ。決して満足のいく原稿ではないけれど、時間切れで入稿してしまうことにする。
 なんだか最近スランプ気味だ。前はある程度アタリを付けて原稿を書き始めれば、それでだいたい収まるべき時間内に収まるべき内容の原稿が仕上がったんだけどなぁ。僕の調子が悪くなっているのか、はたまた要求水準が高くなっているのか、あるいは前はただ単に自分の書くものに対して鈍感だっただけなのか……。
 午後は飯田橋の日仏学院でフランス映画祭横浜のプレス試写を2本。1本目はパラサイトシングルの息子を持った両親の苦悩を描くコメディ映画『タンギー』。これは面白かった。2本目はクロード・ルルーシュの新作『レディース&ジェントルメン!!』。前作『しあわせ』が素晴らしいできだっただけに、今回はちょっと力不足という感じがする。映画の目指す方向もやりたいこともわかるのだが、監督の演出力がそれに追いついていかないのではないだろうか。ちょっとチグハグな感じがする。これは構成の複雑さとは、また別の問題だと思う。
 銀座に戻ってコンビニでパンを買ってから銀行でお金を引き出し(簡易保険用)、そのままル・テアトル銀座で『阿弥陀堂だより』の完成披露試写。小泉堯史監督の新作は、前作の黒澤イミテーションから打って変わって自分の世界になっているようだ。面白い。音楽の加古隆は『白い犬とワルツを』とやってることが変わらないのかも。映画のあとでお土産にお酒をくれた。先日『海は見ていた』でもらったお酒と合わせて、これは次回のオフ会の時にでも配ってしまおうと思う。
 読む本がなくなったので松兼功の「障害者に迷惑な社会」 を読み始めたのだが、これが思ったほどは面白くなかったのは残念。まだ半分しか読んでいないけれど、これから面白くなるとはとても思えない。それでも律儀に、一応は最後まで読むけどね。

6月4日(火
 午前中に映画の感想を全部書き終える。C誌の構成案も考えなければならないのだが、これは延び延びになっている。今日の夜にでもやろうかなぁ……と考えて先延ばしにすると、たぶんまた何かの事情でできなくなるんだろうな。
 郵便局で冊子小包を1通出し、郵貯に年金の掛金を入金してから、午後はエスパスイマージュで『記憶の森』の試写。交通事故で記憶障害になった男と、わずか32歳でアルツハイマーになってしまった女性の愛の物語。オープニングはチャップリンの「ティナティーナ」(『モダンタイムス』の主題歌)で始まり、物語前半はコメディ調。しかし主人公たちがアパートで自活生活を始めたあたりから、ヒロインの障害がどんどん重くなってくる。なんとも哀れです。ヒロインを演じたイザベル・カレはこれまでにもちょくちょく目にした女優さんですが、この映画の芝居はすごい迫力でした。彼女が失われていく記憶にパニックを起こし、恋人に当たり散らす場面は鳥肌が立つような渾身の芝居。これも日本での配給予定なし。
 2本目は表参道のアウラスクリーニングルームで、スペイン映画『ネイムレス/無名恐怖』の最終試写。幼児誘拐とカルト宗教を結びつけるアイデアは面白いけど、映画はスタイルばかり気にしたB級作品だと思う。緊張感がないのです。全体が一本調子で、観ていて途中で雰囲気に慣れてしまう。
 帰宅途中に近所の生協でチューハイとワインを買って帰る。チルトのギョウザを焼いて、それをつまみに缶ビールを1本半。テレビでワールドカップの「日本対ベルギー」を見て、サッカーに興味のなかったはずの僕も大興奮。半分はビールのせいだけど、これはいい試合だったと思う。点の取り合いになったのが、僕のような素人にもわかりやすい。
 持ち歩いていた「障害者に迷惑な社会」を読み終わったのだが、やっぱりつまらなかったなぁ……。文体が僕の趣味に合わないというのもあるけれど、そもそも社会構造や文化についての認識が僕と著者とではまったくかけ離れている。「妻子を養う」という言葉が女性差別だという意見には首を傾げるし、日本の社会風土をまったく無視したところで個人の自立ばかりを論じても意味はないだろう。日本文化の中では、欧米流の「個人の自立」などあり得ない。そうした認識なしに「スウェーデンの福祉は素晴らしい!」と感激し、「それに引き替え日本は」と嘆いてもまったく意味がないのです。日本では日本の国情にあわせた福祉の姿がなければならないでしょう。ただしそうした認識を、行政の担当者も持ち合わせていないのが日本の不幸なのかもね。欧米流の福祉政策を日本に移植しても、そのままでは絶対に根付くことはない。でも手本とすべきモデルケースが欧米にしかないという日本の悲劇。次はどの本を読もうかなぁ……。

6月5日(水
 午前中に映画の感想を2本書いてしまい、C誌特集記事用の構成案をまとめ、使用する写真を選び始める。写真を探す作業にはずいぶんと時間がかかり、全体の3分の1ほど終ったところで午前中は時間切れ。残りは夜帰宅してからの作業となる。
 午後は日仏学院で『ル・ブレ(原題)』の試写からスタート。脱走囚と看守が高額賞金が当選した宝くじをめがけてアフリカまで珍道中を繰り広げ、それをギャングや警察が追いかけていくという話。映画序盤に用意されている観覧車のアクションシーンがすごい。しかし映画後半に、これに匹敵する見せ場がないのは残念。ちょっと尻すぼみなのだ。監督は『パパラッチ』のアラン・ベルベリアンと、ドルフ・ラングレン主演の傑作『ピースキーパー』のフレデリック・フォレスティアの共同。観覧車のシーンを演出したのはフォレスティア。やっぱり……。
 渋谷まで大急ぎで移動したのだが、先日は有楽町線を使ったので今回は東西線を使ってみた。これが大失敗。東西線の飯田橋駅が、まぁ遠いこと遠いこと。結局シネカノンに到着したのは3時半ギリギリ。試写室はやや混みで一番前の席に座ったのだが、すぐ隣の席におすぎさんが……。映画は河村隆一主演の『ピカレスク/人間失格』。太宰治の伝記映画だが、伊藤英裕監督の映画にしては力が入っている。太宰治の半生を、彼と関わった女性たちとのつながりの中で描こうとする作品。太宰治の玉川上水での心中がじつは……というあたりは別に新解釈でもなんでもないようだけれど、心中相手の愛人を演じたとよた真帆の芝居に力があって、思わずゾッとさせられた。女優がみんないい。影が薄い河村隆一の太宰に対する、生命力あふれるさとう珠緒。裕木奈江が最後に吐き捨てるように発する言葉の迫力。河村隆一は自己中心的で自信過剰で自己憐憫と自己陶酔が激しい主人公を見事に演じている。太宰治が実際にはどんな人だったかなんて僕はあまり興味がないけれど、この映画の人物像にはリアリティがあった。
 帰宅してワインを1杯飲みながら写真選びの続き。一通り選び終って、構成案とリストを編集部にメール。明日は午前中から試写なので、早めに寝て朝から映画の感想を書いてしまわねばならない。ぴあフィルムフェスティバルの案内が来ていたけれど、これは観に行く時間があるかなぁ……。仕事が忙しくなると、とても他のことが考えられなくなってしまう。今月はまだ始まったばかりなのに、なんだかひどく忙しい気分になっている。土日に予定が詰まっているからかなぁ。ひどいプレッシャーが……。

6月6日(木
 午前中から試写があるので早起き。4時半頃に目が覚めてしまったので、そのまま起きあがって仕事を始める。さすがに眠いが、仕事がはかどることははかどる。
 9時過ぎにHPの更新作業を終えて、飯田橋の日仏学院へ。『ミシュカ』という映画を観たのだが、これが僕の趣味にはまったく合わなかった。こういう映画が時々あるから、映画を観るのは面白いし、同時にひどく苦痛に感じることもある。
 ファーストキッチンでホットドッグを食べてから、永田町経由で渋谷へ。2本目の映画はニュージーランド映画『スティックメン』。駆けビリヤードの話だけれど、これは面白かった。1本目がダメだっただけに、これはありがたい。銀座線で京橋まで移動し、映画美学校で『イチかバチか〜上海新事情』という中国映画を観たが、これも映画に山場がなくてどうも……。
 教文館のキリスト教書籍コーナーを散策し、夕食食べてから帰宅。先日受けたサリダの取材のゲラがFAXで送られてきていたけれど、さすがにとりとめのないインタビューをうまくまとめるものだなぁと関心。たまに取材を受ける側になるのも面白い体験です。試写状がたまってきたので、整理しなければならないのだが、今日は眠いので早く寝たい。でも明日も午前中から試写なので……。C誌特集のための写真リストを追加してメール送信。とりあえずこれで今月の仕事は一段落だけど、この週末は忙しいし、来週からは今月の締切ラッシュが始まる。う〜む。経済的に安定してきてはいるけれど、これでは身体がもたないなぁ。ちょっとばて気味。体中に疲労が溜まっている。誰かにマッサージしてもらいたい気分。お灸や針は効くかな。前から興味があるから、近所の鍼灸院にでも行ってみようかなぁ。

6月7日(金
 午前中からフランス映画祭横浜のマスコミ試写。既に何本かこの映画祭の試写を観ているのだが、今年はこれといった面白い映画に当たっていない。少なくとも今週観た中では、「う〜む、これはすごい!」と思える映画が1本もなかった。そんなわけで午前中の試写もかなり気が重いのだけれど、この日観た『ギャラクシーにようこそ』はなかなか面白い映画でした。亭主の虐待から逃げ出した中年女性が街道沿いのモーテルで新しい自分に出会うというものだけれど、主演のアヌーク・グランベールとベルナデット・ラフォンが素敵。これは日本で劇場公開してもいいレベルの映画だと思うけどなぁ……。例によって配給未定。
 フランス映画祭横浜は来週分の試写スケジュールがずいぶん入れ替わったので、週末にまた試写スケジュールを再検討しなくてはならない。これはちょっと大変だ。
 午後は映画美学校でモフセン・マフマルバフ監督のドキュメンタリー映画『アフガン・アルファベット』を観る。46分のビデオ作品だが、これはすごくよかった。感動しました。
 歩いて築地まで出て、波除神社のお祭りを見物。夕方帰宅して、夜はワールドカップのイングランドとアルゼンチンの戦いを見る。ただし前半のみ。缶チューハイ2本とワイン1杯でかなり酔っぱらい、そのまま寝てしまう。

6月8日(土
 午前中にNW誌の連載原稿を書いて入稿。携帯用のコンテンツも入稿してしまう。
 午後は新宿の京王プラザホテルで@niftyフォーラムマネージャーが集う「FORUM CONFERENCE 2002」に参加。今回の中心テーマは、やはりフォーラムのWEB化ということだろう。新サービスの紹介では、ビデオチャットのデモが興味深かった。同時に3人まで参加できるテレビ電話のようなもので、音声と動画のレベルはスペースシャトルと地上のテレビ中継みたいなもの。かなり映像が流れてしまうし、音声も少し遅れたり飛んだりする。でも十分に実用になるレベルだと思う。これが月500円で使えるなら面白い。
 懇親会では知り合いのシスオペたちと歓談。映画関連フォーラムの最大手である「映画フォーラム」が今回も参加していなかったため、今後の方針についてまったく話し合いができない。先行の「DVDフォーラム」の責任者もいなかった。なんだか事前協議の場としてはまったく機能していないなぁ……。
 酔い覚ましも兼ねて、映像製作フォーラムのシスオペと新宿駅近くのスターバックスで少し話をする。ほろ酔い加減の馬鹿話に花が咲いたのだが、今回は「試写室のシネコンを作ったら儲かるぞ」という話で盛り上がった。
 帰宅して早めに横になったのだが、蒸し暑くて寝苦しい。夜中に何度も目が覚めてしまい、結局クーラーを付けて寝ることにした。リモコンの電池が切れていて参った。

6月9日(日
 寝苦しい夜を過ごしたせいか、ちょっと寝不足気味な気がする。朝から映画の感想を1本仕上げ、P誌WEB版の原稿を準備。9時過ぎに中央区役所の月島出張所に出かけて、ハッピー買物券を購入。まさか1時間も行列させられるとは思わなかった。僕が最初にこれを買ったときは、売れ残りが出ていてどうしようもない状態だったんだけどなぁ。大急ぎで築地に出かけ、花屋経由で銀座教会へ。花の日の礼拝を終えて、弁当を持って銀座松屋の屋上でひとり昼食。その後、教文館を少し散策し、再び教会に立ち寄ってから帰宅。今日もお祭りがあったが、僕はそのまま仕事場へ。
  行きつけの床屋に寄ったら客がひとりもいなかったので、そのまま伸びた髪を短く刈ってしまう。門仲のブックオフで映画関連の本を何冊か購入。先日から黒澤明関連の本があったのに目を付けていたのだが、これは100円の棚に落ちてきそうもないのでそのまま定価の半額でまとめ買いした。黒澤明と宮崎駿の対談本「何が映画か―『七人の侍』と『まあだだよ』をめぐって」、西村雄一郎の「黒澤明を求めて」、シナリオと絵コンテ「海は見ていた―巨匠が遺した絵コンテ・シナリオ・創作ノート」、堀川弘通監督の「評伝 黒澤明」。黒澤以外では「荻昌弘の試写室―週刊朝日 (日本映画編)」と新井一の「シナリオの基礎技術」を購入。全部まとめて6千円弱だったが、ブックオフでこんなに買ったのは初めてかもしれない。
 生協で買物して帰宅し、チルトの餃子を焼いて缶チューハイ、日本酒、さらにワインを飲む。飲みながら早速「何が映画か―『七人の侍』と『まあだだよ』をめぐって」を読んでしまう。これは中身の薄い本だった。次は堀川監督の本を読んでみるつもり。
 朝から喉が痛くて少し頭痛がする。風邪かもしれない。やばいぞ。

6月10日(月
 午前中に映画の感想を少し書き、メルマガの編集の続きをやっておく。午後の試写は少し本数を減らすことも考えたのだが、仕事の区切りがちょうどお昼頃になったので、計画通りいそいそと試写に出かけた。
 1本目はアミューズピクチャーズ試写室で『ぼのぼの/クモモの木のこと』を観たが、この3DCGアニメはどうしようもなくおセンチで、観ていてうんざりさせられてしまった。ゴンチチの音楽も耳障り。もっとドライに作った方が、原作の持ち味が生かせるようにも思うんだけど。それとも原作そのものが、途中からこういうウェットな方向に流れているんだろうか。僕が読んでいたのは、最初の2,3冊だけだから、そのあたりがよくわからない。ちなみに原作者もこの映画の脚本と絵コンテに参加している。
 2本目はフランス映画祭横浜2002の試写で『トスカ』。プッチーニのオペラを映画化したものだが、人物のクローズアップがやたらと多くて画面が暑苦しい。アップやカットバックは映画の専売特許だから、効果的に使えばまさに映画的な効果が生み出せる。でもこうアップばかりだと、全体が単調になってしまう。
 3本目は徳間ホールで『BALLET/アメリカン・バレエ・セアターの世界』というドキュメンタリー映画。これは素晴らしかった。3時間近い時間があっという間に過ぎていく。バレエ映画『センターステージ』は、おそらくこの映画をずいぶん参考にしているのだろう。
 映画のあと、新橋で牛丼を食べて帰宅。なんだかひどく疲れている。月曜日からこんなに疲れて、週の残りをどうすればいいんでしょう。とりあえず明日は編集者と食事をする約束があるので、試写は2本になる予定。
 昨日読み始めた堀川弘通監督の「評伝 黒澤明」をあっという間に読了。これは面白かった。若い頃の恋愛や結婚についての話など、身近にいた人が今だからこそ語れるという内訳話は興味深い。例えば高峰秀子との恋愛について、黒澤監督本人は「蝦蟇の油」の中で何も語っていない。高峰秀子の自伝にはかなりのページが割かれているけれど、これはこれでやはり一面的すぎる記述。堀川監督の証言は、この間の黒澤監督の動きを、黒澤監督側から描いている点が貴重なのだ。東宝争議について、この本ほど明快に解説している本もなかなかないだろう。ただし僕が本当に知りたい部分については、堀川監督もばっさりカットしてしまっている部分もある。例えば僕は、黒澤監督と作曲家の早坂文雄の同性愛とも解釈できる友情についてもう少し傍証が欲しかったのだが、この点について堀川監督は何も述べていない。戦後すぐに東宝で製作された『明日をつくる人々』についてはまったく無視。『トラ・トラ・トラ!』降板とその後の自殺未遂騒ぎについても、真相はやはり藪の中。『影武者』の勝新降板についても、それは同じ。自殺未遂騒ぎのくだりでは、側近たちが黒澤監督を気づかって何も言えないでいるところで、初対面の西村雄一郎があっさりビアホールでその話を聞き出した件を、少々のくやしさをにじませつつ書いているのが面白い。じつはこの本を読み終わった直後に読もうと、カバンの中に突っ込んであったのが西村雄一郎の「黒澤明を求めて」で、ここにはそのビアホールでの対談がすっかり収録されているのだ。もともとキネ旬用の記事としてまとめたものだそうだが、映画館(テアトル新宿)で声をかけるところから、ビアホールに向かって歩く道中、ビールの注文、トイレの中での会話、駅で別れるまで、2時間近い会話をすっかり再現しているのには驚かされる。たぶん自宅に戻ってから、興奮冷めやらないまま会話のほとんどをメモにしたのだろう。これが当時の黒澤監督の心境を物語る、貴重な映画史の資料になっているのだ。

6月11日(火)
 映画の感想を書く作業が少しずつ遅れていて、これはかなりヤバイ状態。今週から来週の初めにかけてP誌の原稿も書かなければならないし、C誌の特集も書かなければならない。それなのに、そのための時間がまったく作れないのは本気でヤバヤバだ。仕事もしなければならない。休みもほしい。釣りに行きたいし……。Amazonのアソシエイトに新しいタイプのリンクができたので、早速ホームページに貼り付けてみる。映画瓦版のトップページや、このページにあるのがそれ。使いようによっては、ものすごく効果的なリンク集になるかもしれない。
 午後は映画美学校で岡本綾主演の『おぎゃあ』を観る。人情劇なのかコメディなのかファンタジーなのか、なんだかどっち付かずの印象があるけれど、映画を観終ったあとの印象は爽やか。主人公につきまとう少年と生まれてくる赤ん坊のつながりは見え見えなのだから、ここにもうひと工夫あると物語がふっくらしたと思う。
 2本目はメディアボックスでエミール・クストリッツァ監督の『SUPER 8』というドキュメンタリー映画。監督が自身の所属しているバンド「ノースモーキングオーケストラ」を紹介する作品だけれど、映画全編を埋め尽くすノリのいい音楽にしびれる。
 簡単に食事をしたあと、本屋やビックカメラに立ち寄り。外出先で原稿が書けるように、小型のノートパソコンかサブノートか携帯端末が欲しい。(なんか、この話は前にも書いたかも。)東芝のリブレットか、パナソニックのレッツノートか、NECのラヴィZあたりが小型ノートの有力候補だけれど、文章をただ入力するだけならhp Jornada 728という選択肢もある。どうせノートを買っても、実際はほとんど外で仕事をすることなんてないだろうから、Jornadaの方が僕向きかもしれないけど……。あとはこれにH''をつないで、メールのやりとりだけできるようになっていれば、外出先でもまず困らない環境になるだろう。
 7時にビックカメラの前でW誌の編集者と待ち合わせ、近くの居酒屋で新しい仕事の話。まだぜんぜん具体性はないのだけれど、雑誌の新しいコラムの企画や、単行本の企画の話。ただし僕は、酔っぱらって聖書の話をしていた。夕方小雨がぱらついて少し心配したが、雨は降らなかったので自転車で帰宅。

6月12日(水)
 疲労が溜まりに溜まったことと、作業量がそろそろパンク寸前なこともあり、この日は予定していた試写をすべてキャンセルして部屋にこもる。体がとにかく重くて動くのに苦労する。たまっていた映画の感想を書きながら、少し横になって休む。朝から雨でひどく寒く、数日前までの寝苦しさが嘘のよう。まぁたまにはこういう日もあるでしょうとも……。
 結局仕事は余りはかどらず、夜になって買物に出て、少し飲んでまた寝てしまう。「黒澤明を求めて」を読了。次は何を読むか……。オークションで購入した『ローズマリーの赤ちゃん』のDVDが到着。とりあえず特典映像部分にだけ目を通す。本編は2時間以上あるから、いつ観るか……。観る暇があるのか……。ヤフオクでは他にも『オーメン』三部作をいつか手に入れようと狙っているのだが、なかなか落札できずに悔しい思いをしている。

6月13日(木)
 予定では朝から4本の試写を観るはずだったのだが、体調が本調子ではないことと、仕事が溜まっていることを理由にすべてキャンセル。かといって仕事をするわけでもないのだけれど、とりあえず午前中から映画の感想を全部書いてしまい、とりあえず無用な足枷はこれで消えた。
 午後はC誌特集用にまつわるCD-ROM用の原稿を作って先にメールで入稿。その後電話があって、今月締切の原稿のタイトルがだいたい決まる。リストアップすると、これがやっぱりかなりの分量なのだ。大変だなぁ。電話の時「黒澤特集やりましょうよ〜」と強く言っておいたけれど、実際にどうなるかはまだちょっとわからない。一応提案はされるようだけど。
 先日特典映像だけ観ていた『ローズマリーの赤ちゃん』のDVDを観る。血が見えるのは序盤の投身自殺のシーンくらいで、あとはひたひたと迫る心理的な危機の連続になる。妊娠しているはずなのに、逆にどんどん痩せていくミア・ファーロー。周囲の人が全員悪魔の手先だという妄想。この映画は'60年代という時代と切り離してしまうと、よくわからない映画になってしまうかもしれない。当時はラブ&ピースの時代で、既存の社会的な規範や倫理観が足下で揺らいでいた。人間性解放が大らかに歌い上げられる一方で、それまで社会を支配していた古いキリスト教道徳に替わる価値観を見つけられないでいた。そこに悪魔崇拝が入り込む。
 夕方からはやはり以前DVDを買っていた『大統領の陰謀』を観る。ワシントン・ポストの記者がさまざまな圧力にもめげず、地道な取材でウォーターゲート事件の真相を暴いていく実録ドラマ。しかしCD-ROM版の百科事典「スーパーニッポニカ・ライト」でウォーターゲート事件について調べると、事件は『政治路線をめぐる権力内部の抗争の発現』であって、『事件の内容を丹念に追及・暴露していったワシントン・ポスト紙の2人の記者カール・バーンスタイン、ボブ・ウッドワード』の働きも『この大勢を助長するために負わされた副次的役割にすぎなかった』と総括してある。こう断言されてしまうと、迫真のポリティカルサスペンスもなんだか艶消しだなぁ。ディープスロートの内部告発も、反ニクソン陣営のヤラセだったってことか。ジャーナリストの正義感が、政治抗争の道具にされてしまったわけね。映画の原作になったバーンスタインとウッドワードのルポは以前文春文庫で出版されていたが、現在は品切れ(絶版)になっているようだ。
 いつもは土曜日に入稿しているN誌の原稿を、前倒しで仕上げて入稿してしまう。「小説『聖書』旧約篇」を読み始めるが、この本の著者は僕と聖書の解釈が違うなぁ。まだ読み始めたばかりなのだが、いつ読んでもあまりに痛ましくて涙が出そうになるハガルとイシュマエル母子の記事がそっけない。イスラエルの祖であるアブラハムとサラに同情的な描き方をしようとすると、ハガルを傲慢な女として描くしかないってことだろうか。僕はハガルを気の毒な女だと思うので、この本が描いているハガル像には納得できないなぁ。

6月14日(金)
 午前中は仕事の原稿を書く。午後はFOXで『アイス・エイジ』の試写。絵柄的にも物語的にもディズニーの『モンスターズ・インク』を連想させてしまうのだが、これはこれで面白い。1時間22分というコンパクトさもいい。この日はこれで試写もおしまい。試写室を出て六本木の交差点方面に歩いていくと、日本チームの青いユニフォームを着たサポーター軍団と遭遇。警官の数もやたらと多い。これは長居は無用と、少し本屋に立ち寄ったあと大江戸線で帰宅。スーパーで買物をしていたら、そこでもラジオの中継を流していた。日本中、サッカー一色ですなぁ。買物を終えて部屋に戻ってから、僕もサッカーを観ていたんだけど、試合内容としては凡戦だったような気がする。1位で予選突破したのは結構な話だけれど、僕は最初のベルギー戦のような興奮は味わえなかった。
 夜はさらに仕事。何本かの仕事を仕上げ、入稿すべきものは入稿してしまう。「小説『聖書』旧約篇」は有名なヨセフ物語を読み終わったところ。レアとラケルの和解を感動的な物語に脚色し、ヨセフが主人の妻に誘惑されるくだりにやけに筆をさく著者だが、気の弱い長男ルベンに対してはやけに冷淡だと思った。ヨセフが殺されそうになったとき、なんとか助けようとしたのはこの兄なのになぁ……。ヨセフの姉ディナが土地の酋長の息子にレイプされたあと、兄弟たちが復讐のため策略をろうして相手の一族を皆殺しにしてしまう話もカットされている。僕はこの話が好きなんだけど……。どうもこの本の著者と僕とでは、聖書のどの部分を面白いと感じるかという部分に開きがあるようだ。まぁつまらない本ではないけれど、不満は多い。もっとも僕の場合、聖書の中の野蛮な話や極悪非道な話を面白がる傾向があって、そうしたものは普通の「聖書物語」の著者にとっては邪魔っけなんだろうなぁ。例えばロトと娘たちの近親相姦は話としては面白いけど、物語の中に割り込ませるのは難しいのかもしれない。でもやっぱりハガルとイシュマエルの話はもう少し厚みが欲しかったなぁ。イシュマエルがアラブ人の祖先だということが理解できると、現在の中東情勢につながる話になってくるんだけどね。
 モーセの物語は主人公の生い立ちからではなく、成長したモーセがファラオの前に現れるところから始まっているのが面白い。まだ読み始めたばかりだけれど、これは先がちょっと楽しみ。僕はモーセの兄のアロンが好きなんだけど、彼がどう描かれているか興味がある。たぶん僕の期待には添えないんだろうけどね。

6月15日(土)
 朝から仕事。映画の感想も書く。できるものから次々に仕上げて入稿していく。来週1週間が締切の山場。今週は体調が悪くて何日か休んでしまったのだが、休んだおかげで体調も少しずつ戻ってきた。ただし試写に行かなくなると生活のリズムが狂ってしまい、食事時間などがバラバラになるのが問題。休んだおかげで体は楽になってきたけれど、規則正しい食事をしないとどうしてもドカ食いになって胃腸に負担をかけ、十二指腸潰瘍が再発しそうで心配だ。
 夕方から東京日仏学院で『アーメン』の試写。第二次大戦中にローマ法王がホロコーストを知りながら結果として黙殺したという話を、ナチス親衛隊の将校でありながら戦後すぐに連合軍に投降し、積極的に内部資料を提供した実在の人物のエピソードとからめていく構成。バチカンとナチス将校の仲立ちをつとめようとする修道士に、マチュー・カソヴィッツが扮して熱演。今年のフランス映画祭の試写ではあまり歯ごたえのある作品に出会えなかったのだが、この映画はすごかった。監督はコスタ・ガヴラス。帰宅していろいろ調べてみると、映画で弱腰ぶりを批判されているピウス12世の前任者ピウス11世は、ナチスの教会政策をかなり厳しく批判するなど、政治的な発言がいろいろと物議を呼んだ法王だったらしい。ところが彼が急死。その突然の死には、暗殺の噂もあるという。後任のピウス12世は前任者と違って政治に極端に距離を置き、常に中立な立場であろうとしたということだ。その結果がホロコーストの黙認につながった。ピウス12世は列聖の審査が行われているはずだが、これにはユダヤ人団体から強い抗議が寄せられているという。まぁ当たり前か……。
  帰宅して『アーメン』の感想を書いてしまう。映画を観たその日のうちに感想を書くことは珍しいのだけれど、明日はいろいろやることがあるので前倒し。

6月16日(日)
 昨夜は寝るのが僕にしては遅かったので(夜中の2時頃になった。ただし起きたのは8時過ぎだったけど)、目覚ましで起きてもひどく眠くてたまらない。午前中はCS。帰りに銀座の教文館に立ち寄って、先日発売されたばかりの「岩波キリスト教辞典」を購入。中央区のハッピー買物券が利用できる店は近所のスーパーや床屋の他に教文館ぐらいしかないので、この機会になるべく資料を買っておくつもり。本当は「キリスト教神学入門」もほしかったのだが、キリスト教書のフロアは開店時間が午後からなので、これはまた別の機会に買うことにしよう。現在他にもほしい本はたくさんあって、キリスト教関連だけでも「おもしろキリスト教Q&A77」「一神教の誕生―ユダヤ教からキリスト教へ」「マニ教とゾロアスター教」「異教的中世」「天使のような修道士たち―修道院と中世社会に対するその意味」「異端の宗派ボゴミール」「聖書を彩る女性たち―その文化への反映」などがカートに入りっぱなしになっているし、他にも注釈つきの「ドラキュラ」がぜひほしいのだがなかなか買う決心がつかずにいる。仕事とは結びつかない趣味の領域に近い本なので、おいそれとは買いにくい。それにまだ読んでいない同傾向の本が、部屋にはたくさんあるしなぁ。まずはそれらを少しずつ片付けて、その後で新しい本を買わないと場所がなくなってしまう。
 買ったばかりの「岩波キリスト教辞典」はとてもよい本で、内容的には「現代キリスト教用語の基礎知識」といった感じ。ひとつひとつの見出し語の解説は文章量がほどよく、たいていの疑問はこれ1冊を手がかりにしてわかる仕組みになっている。これ以上に詳しいことが知りたければ、教文館の3階(キリスト教書籍売場)に行くことになる。今までは何か調べものをするとき、聖書関係はまずコンコルダンスを調べてから聖書にあたり、それから聖書辞典や聖書略解を調べて、さらに他の関連書をひっくり返すという手段をとっていたのだが、この辞典が手に入ったことでそうした手間は半分になるだろう。キリスト教関連の小説や映画などにも、かなりの見出しをさいているのがユニーク。何しろ永井豪の「デビルマン」についての見出しまであるのだ。解説しているのは四方田犬彦。暇なときにパラパラとページをめくっているだけでも退屈しそうにない。できればこの本のCD-ROM版がほしいなぁ……。

6月17日(月)
 午前中にメルマガの編集と配信手続きを済ませる。室田日出男が亡くなったというニュースを知って、あわててそれをニュースに入れたりする。C誌の原稿は特集を一番後回しにして、残りを着々と進めている。ボリュームのある原稿は時間を取ってまとめて作業しないと、かえって効率が落ちるのではないだろうか。まぁこれは、なかなか特集部分に手を付けない自分に対する言い訳でもある。
 午後は試写を2本。今日は雨が降っていないので自転車移動だ。まずは東宝に向かったのだが、途中の月島で釣りをしているおじさん発見。ハゼを釣っているようだが、観ている目の前で2,3匹は釣り上げていた。猛烈に釣りがしたい欲求が膨らんでくるが、眺めていてもしょうがないのであわてて自転車をこぐ。試写室は滑り込み。ベルギー映画『エブリバディ・フェイマス!』だが、これはお話がなかなかユニークなので、誰か権利を買って日本映画として翻案すれば面白い。この設定は日本でもいけると思う。映画自体はそれほど面白くないのだけれど……。
 本屋に立ち寄って時間を少しつぶし、松竹試写室でジュディ・デンチ主演の『アイリス』を観る。アルツハイマーでぼけていく妻を、長年連れ添ってきた夫が介護するという話に、夫婦の若い頃のエピソードがからまるという1時間半の映画。これは脚本の妙技だろう。青年時代の若々しい恋のエピソードと、長い時間を共に過ごしてきた老夫婦の愛情物語が、映画を両側に引っ張り合って緊張感のあるドラマを作り上げている。ただしこれは、自分の年齢的な問題もあってそれほど身につまされた感じはしなかった。「うまいなぁ」と思った程度。
 築地警察に立ち寄って築地まで歩き、スーパーで買物をしてから帰宅。C誌の原稿をやれるところまでやって、あとは寝てしまおうかな。最近どうも夜更かし気味なので、昼間に眠くて仕方がない。amazonでWZ EDITOR 4.0 with WZ MAILを注文。今は原稿執筆にワープロを使っているのだが、僕の仕事ならむしろエディタの方が向いているだろう。マクロ集を検索したら、僕の欲しい機能はだいたい実現できそうだし……。

6月18日(火)
 昨日スーパーでイワシを買っていたので、今日は朝からいきなりイワシのフライを作っていた。こんなもの普段なら午前中に作って昼のおかずにでもすればいいのだが、今日は午前中から試写があるためそうそうゆっくりもしていられない。イワシを手開きにして小麦粉と溶きたまごとパン粉を付け、フランパンで揚げる。パン粉は賞味期限が切れていたけど、まぁ腐るようなものでもないし……。というわけで、今日は朝からずいぶんと豪華。
 食事の後に少し仕事をして、その後雨が降っている中を歩いてソニーの試写室へ。『メン・イン・ブラック2』の試写だったのだが、試写室は結構混んでいた。仕事で原稿を書こうと思うと、20日の完成披露試写じゃ間に合わないもんね。
 映画の後、雨の中をまた歩いて戻ってくる。足下はずぶ濡れ。雨の中を歩くなんて久しぶりだけれど、濡れた着物をすぐに着替えられるのなら別に嫌なものでもない。ただし一度こうして帰宅してしまうともう二度と外出するのはおっくうになるので、今日は午前中の試写だけでおしまい。午後観るはずだった試写は別の日に回すか、調整の付かないものはそれっきりになる。
 部屋にいたついでに3時半からはワールドカップの日本対トルコ戦。う〜む、かなり攻めていたのに勝てなかった。しかし日本は本当に強くなったなぁ。今日の試合も、場合によっては勝っていても不思議ではない試合だった。でも粘りが不足していたんじゃないだろうか。本戦に出場したことで、なんとなく肩の荷を降ろしてしまったところがあったんだと思う。「何が何でもベスト8だ!」という希薄は、選手たちにもサポーターたちにもテレビの解説者にもなかったような気がする。負けが決まったときも、悔しがっていた人はほとんどいない。終了のホイッスルが鳴った途端に「よくやった!」という雰囲気になったのは、やっぱり日本中が「日本はベスト16でよし!」と思っていたからじゃないかな。
 夕方から原稿の直しを少し。夕食に少し飲んだら仕事がまた進まなくなってしまった。明日と明後日の2日間で特集記事を仕上げてしまわないと、フランス映画祭横浜に行けなくなってしまうではないか!(映画祭は本当は明日からなんだけどね。)

6月19日(水)
 午前中に映画の感想を書く。これに思った以上に時間がかかってしまった。午後はC誌の原稿に手を付けたのだが、これが思った以上に相当な難物。1日でだいたいのめどが付くかと思ったら、非常に手こずってまったく進まない。結局夜になって見開き分だけの原稿を形にして、この日は寝てしまう。こんな状態なので、当然試写はお休み。明日も試写を休むけれど、明後日に映画に行けるかどうかもこれでは微妙だ。

6月20日(木)
 午前中からC誌の原稿を進める。昨日よりは順調だが、それでも時間がかかっていることは間違いない。これは今日1日では終らないだろうなぁ。午後になってamazonからWZ EDITOR 4.0 with WZ MAILが到着。早速パソコンにインストールして、評価版ではインストールできなかったマクロを設定。今まではずっと秀丸を使っていたのだが、それに比べてどの程度便利になるのかは、少し使い込んでみないとわからない。とりあえずNIFTERMの外部テキストエディタをWZに変更する。メーラーもWZ MAILに乗り換える準備をしたけれど、メールの振り分けを再設定したりするのに結構時間がかかるかもしれないなぁ……。
 ヤフオクに出品していたHP200LXに思っていた以上の値段が付いて落札された。引き出しの奥で巨大な電卓と化していたものなので、誰かが引き取ってくれるならそれも結構な話。以前ヤフオクで購入したCONTAX T3Dのオプション品も、そこそこの値段で落札されて一安心。
 朝食は春雨を炒めて食べた。昼はインスタントラーメン。夜はスパゲティ。プランターのイタリアンパセリを刻んで混ぜ込んだのだが、これはこれでバジルとはまた違った味がして美味いかも。でもこうやって使うならバジルの方がいいな。イタリアンパセリの使い方については、もうちょっと研究してみよう。
 つまらないと思っていた「小説『聖書』旧約篇」は、ダビデとソロモンのイスラエル王国のところまで読み進んだ。これはなんだか、とんでもないアクロバットをやっているぞ。ダビデ物語ではルツ記をいきなり引用したり、詩篇からダビデが書いたと伝えられている詩をいくつも引用して小説の中にちりばめている。ソロモン伝になるとさらに、雅歌、箴言、伝道の書などからいろいろなフレーズを自由に引用している。びっくりしたのは、雅歌の中でも特にエロチックに思える5章のおとめの歌を、ソロモンの姉タマルの狂騒の言葉にした脚色かもしれない。異母兄に犯され、実の兄を殺されたタマルは発狂し、父ダビデから王国を引き継いだ美しい弟ソロモンに恋愛に似た感情を抱きながらさらに激しく狂っていく。これはちょっとすごすぎる。
 月曜日に現像に出したAPSフィルムの同時プリントが仕上がったので引き取りに行ったのだが、APSは画質が悪いという最初の印象はずいぶんと薄くなった。「しょせんこんなものか」という気持ちが現像に出す前からあるし、現像料の安いところをみつけたので(現像と同時プリントで税込み830円)、APSが特別割高だという印象もなくなっている。画質は確かにそんなによくないのだが、これはレンズのせいだと思う。僕が普段使っているCONTAX T2やMINOX 35GTに比べて、IXY iのレンズは描画力が劣るのだ。コントラストが甘く、黒の締まりもない。だから画面に艶やコクがなくなってしまう。普段「写るんです」などを使っている人には、IXYの画質も不満を感じさせないだろう。でもCONTAXと比べちゃうとなぁ……。でも小さくて軽く、ズームレンズ付で、途中でフィルムを入れたり出したりできるという便利さから、僕は今後もIXYを使い続けると思う。

6月21日(金)
 朝からC誌の原稿の見直しと、原稿の追加作業。ボリューム的にちょっと誌面が埋まらないので、書いても書かなくても内容的には大勢に影響のないような記事をせっせと書く。文字通りの埋め草記事。まぁライターの仕事の半分以上は、埋め草記事の精算に費やされているのかもしれない。連載だろうが特集だろうが、雑誌購読者の半分も目を通していないと思うもんなぁ。
 8時過ぎに部屋を出て、いよいよフランス映画祭横浜2002へ。有楽町からJRで桜木町へ出て、そこから歩いてみなとみらいのパシフィコ横浜へ。プレス用のパスを受け取って、午前中から4プログラムを観る。
 まずは『短篇映画特集』。じつは毎年フランス映画祭ではこれが一番楽しみな面もある。他の長編はひょっとしたら日本でも劇場公開される可能性があるけれど、短編はその可能性がゼロだと思うからだ。今回は6本の短編が上映されたが、ジャズに合わせて政治家が熱弁を振るう「胴の舌」と、会社の上司と部下の確執を描いた「スカッシュ」に見応えがあった。最近は日本でもショートフィルムを何本か集めて劇場公開するケースがあるけれど、この2本、特に「スカッシュ」はどこかが買い付けて日本公開しないかなぁ。他にも夫婦がぼろ家をなんとか売りつけようとする「優しい心」や、下着売り場で買物に迷う女性の追いつめられる心を描く「ランジェリー」なども面白かった。アニメ2本、「クイン・スクエア」「タウの死」はちょっと観念的すぎてつまらない。
 近くのコンビニでパンを買って簡単に昼食を取ってから、2本目『海のほとり』を観る。さびれた海辺の町を舞台にした1年間の物語。映画は夏から始まり、冬から春を経てまた夏になる。1年たって町には同じような顔ぶれが揃うが、その中身は1年前とはまったく異なっている。町は静かに死んでいくのか、それとも1年ごとに新しい町へと再生していくのか。おそらく後者だろう。「中国の道教では蝶になるのが最高の生き方なのよ」という台詞が出てくる。蝶は毎年同じ時期に現れる。だがその蝶は、じつは同じ蝶ではなく、毎年新たに生まれるのだ。
 3本目は『ニノの空』のマニュエル・ポワリエ監督の新作『ぼくのパパは、きみのパパ』。主演は『ポルノグラフィックな関係』や『ハリー、見知らぬ友人』のセルジ・ロペス。妻と3人の子供と暮らす主人公のもとに、結婚前に同棲していた恋人が現れる。「じつはあなたと別れたときに妊娠していて、私はひとりで子供を生んだ。でも最近失業して借金もあり、親権も失ってしまった。今は施設に預けられている子供が不憫なので、なんとか父親であるあなたに引き取ってほしい」と言われた主人公は、妻に相談した上で子供を引き取ることにする。おそらく多くの男性にとって他人事ではない物語を、優しく丁寧に、ユーモアたっぷりに描いた映画。
 さすがに朝から連続して映画を観るとくたびれてきたのだが、がんばってもう1本。『トロワ・ゼロ〜サッカー狂時代』は、天才サッカー選手を見出した男が交渉代理人として奮闘するフランス版の『ザ・エージェント』。アメリカがアメフト選手の話なら、フランスは当然サッカーの話になる。アメリカが清廉潔白で誠実な男の話になるなら、フランスでは当然清濁併せ呑む複雑な男の話になる。ちょうどワールドカップシーズンと言うこともあるが、フランスのサッカー文化、フランス人の気質というものがよく伝わってくる映画だと思った。
 この日最後の上映になる『トスカ』は既に観ていたので、僕はここで帰宅。会場から帰宅するまで、たっぷり1時間以上かかる。疲れたなぁ……。郵便受けに新たな試写状の束がどっさり。amazonから『ハリー・ポッターと賢者の石』のDVDが届いていた。数日前からテレビで『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の予告編映像が流れていて、それを観ていたらなんだか欲しくなってしまったのだ。ちょうど500円分のギフト券があったので、それを使って購入した次第。
 ずっと読んでいた「小説『聖書』旧約篇」 もいよいよ終盤。これを読んでつくづく感じたけれど、現在のイスラエルという国はまったく旧約聖書のままの価値観と世界観で国家運営されているのだ。現在のパレスチナ情勢の背景を理解するには、この本を読むのもいいかもしれない。

6月22日(土)
 朝からNW誌の原稿を書いて入稿。今回から担当編集者がかわったので、挨拶のメールを添えて入稿してしまう。
 10時半過ぎに部屋を出てフランス映画祭横浜2002へ。お目当てはニコール・ガルシア監督の『見えない嘘』。93年にフランスで起きた殺人事件を取材したエマニュエル・カレールの実録小説を映画化したもの。偽医師として15年も周囲の人間をだまし続け、嘘が発覚しそうになった時、妻と2人の子供と両親を殺して自殺をはかった男の物語だ。主人公を演じたのはダニエル・オートゥイユ。これは恐るべき映画だった。人間の心の闇を描いた映画だが、その中は空っぽでなにもない。なにもないことが、すなわち悪なのだ。これがハリウッドのサイコスリラー映画なら、主人公の男の犯罪の根に、何らかの原因や理由を見つけようとするだろう。犯罪者の心の奥底に、悪は確かに“存在する”というのがハリウッドの流儀なのだ。だが『見えない嘘』の主人公の心の中には、彼を殺人に走らせる悪の実体はなにもない。悪の実体など“存在しない”のだ。「悪とは善の欠如である」というカトリック信仰(キリスト教正統派信仰)の文化で生まれた映画と、この世を善と悪との戦いの場と考えるファンダメンタルなプロテスタント文化の中から生まれた映画の違いと解釈するのは、少々大げさかもしれない。でもそんな人間性認識の大きなギャップを感じさせる映画だった。帰宅してからamazonで原作「嘘をついた男」を注文。取り寄せになっていたけれど、ちゃんと手に入るかな。映画は日本公開未定だが、このぐらいの映画ならきっとどこかが買うだろう。去年横浜で公開された『ロベルト・スッコ』も公開されるようだしね。たぶん映画が公開されれば、原作は文庫化されるだろう。でもそれまで待てないので、まず買ってしまうことにする。
 「小説『聖書』旧約篇」 を読み終わったので、講談社現代新書の「妖精学入門」を読み始め、その日のうちに読み終わってしまった。(ただしII章の「妖精のエンサイクロペディア」はほとんど飛ばした。)この本を読んでから『ロード・オブ・ザ・リング』を観ると、また違った印象が味わえたかもしれない。ケルト文化、アーサー王伝説、シェイクスピア、ファンタジー小説や映画などに興味がある人は、一読しておいて損のない本。あっという間に読んでしまえるが、これだけで妖精についてのアウトラインは飲み込める。え〜と、明日から何を読もうかなぁ。

※WORM_KLEZに注意! 
 感染力の強いウィルスWORM_KLEZが蔓延中です。このウィルスは発信元を偽ってウィルスメールをあちこちにばらまきます。今回は僕のメールアドレスを使っても、かなりの数のウィルスが送られているようです。僕自身のパソコンは感染していませんから、これは僕の友人・知人・仕事先のいずれかが、うっかりウィルスに感染していることを意味します。
 ウィルスについての情報は、トレンドマイクロ社のホームページを見てください。WORM_KLEZについての専用のページも用意されており、感染のチェック方法や駆除方法の情報はもちろん、駆除用のプログラムなどが配布されています。
 ウィルスの対策には特効薬がありません。ユーザーひとりひとりが、最新のワクチンプログラムで自衛するしか方法がないのです。ワクチンプログラムを持っている人は、定期的にウィルスのパターンファイルを最新版にアップデートしてください。ワクチンプログラムを持っていない人は、他人に迷惑をかける前にソフトを購入してください。感染した当人のパソコンがダメージを受けるのは自業自得ですが、知らず知らずのうちに他人にウィルスをばらまかれては迷惑です。パソコンショップまで足を運ぶ時間がなかなかない人は、amazonで購入する方法もあります。ウィルス対策ソフトのページをご覧ください。どれも送料は無料ですし、注文から2,3日以内に届きます。amazonのソフトショップの値付けは、量販店などに比べてもかなりリーズナブルだと思います。

6月23日(日)
 午前中はCS。またしても遅刻。礼拝のあとでN牧師から「『キリスト教がわかる。』読みましたよ」と声をかけられて恐縮する。先日「アレテイア」に原稿を書いたときは何も言われなかったんだけど、やはり同じ教会のU名誉牧師が同じ本に原稿を書いているという影響は大きいなぁ。
 午後は部屋に戻って仕事。その合間に久しぶりに切干し大根を煮る。調子に乗って作りすぎてしまったので、これはどんどん食べなきゃなぁ。いつもはわりと大事にたべてるんだけど、今度は急いで食べないといたんでしまう。
 溜まっていた試写状を整理してスケジュール帳に書き込んだ。ここ何日かいろいろ考えたのだが、これからはなるべく試写を観る日を月曜から木曜までの4日間に絞り、金曜日と土曜日を仕事の日、日曜日を完全な休みということにしたい。去年は仕事の量が少なかったので、収入も少なかったが時間に余裕はあった。1週間のすべての仕事が、土曜日1日パソコンに向かうだけでまかなえてしまったのだ。日曜日はどうしても土曜日に仕事が追いつかない日のための予備日だった。ところが今年は仕事が増えたので、日曜日の午後はいつも当然のように仕事をしている。場合によっては月曜日にも食い込んで、月曜の試写を別の日に移動させたりもしていた。これは1週間1日の休みもないということで、仕事がないよりはよほど幸せとはいいながら(ここ半年はその幸せをかみしめてました)、やはりかなり不健康なことだと思う。気分転換や発散の場がまったくない。たまには仕事から完全に離れて、本読んだり、テレビ観たり、釣りしたり、買物に出かけたり、遊びに出たりしたいよ。そんな風に考えていたので、今週はしょうがないけれど、来週からは日曜日を休みにする。そのために土曜日はもちろん、金曜日も原稿を書く仕事にあてられるよう、試写をなるべく入れないようにするつもり。今回はそんなつもりで試写状を整理していた。実際にどうなるかは、まだわからない。
 毎日毎日ウィルス入りのメールとウィルス警告のメールが届くので、日記のページにウィルス警告のメッセージを書き込むことにした。それが上記のもの。これは今回のウィリス騒ぎが一段落するまで、ずっと日記ページに掲載しておくつもり。たぶん1ヶ月かそこらで落ち着くとは思う。

6月24日(月)
 午後は試写を3本観る予定だったのだが、仕事の追加が入ったりもしたので急遽すべてキャンセルし、1日中仕事にあてることにした。1本はもう最終試写も終ってしまうのだけれど、たぶん7月にも試写があるだろう。
 午前中にP誌WEB版の原稿を入稿。さらにメルマガも編集と発行予約手続き。映画瓦版のサーバーが一時ダウンしていたようなのだが、昼頃に復旧したので内容をチェックしてからメルマガの配信手続きをする。
 C誌の特集記事向け追加原稿を作る。トビラ用にさらに追加の原稿注文が入ったので、それも含めて夜には入稿。N氏とのメール交換原稿も書かなければならないのだが、これが我ながら面白くないのでどうしようかと思案中。困ったなぁ。

6月25日(火)
 午前中に映画の感想を何本か書き、午後は試写に出かけるという通常の生活がようやく戻ってきた。でもまだフランス映画祭横浜の分が終っていないから、これが結構たいへんなんだけど……。
 細かな雨が降っているので、お昼ご飯を少し早めに食べてから徒歩で外出。まずは築地の聖路加タワーで郵便物を何通か出し、そこから歩いて松竹へ向かって『劇場版ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』を観る。主演の杉浦太陽が2年前に起こしたという傷害と恐喝の容疑で逮捕され、テレビ放送は中止差し替えになり、映画も公開中死が検討されたそうだが、結局は主演俳優の出演部分をカットし、代役を立てて追加撮影を行うことで8月3日の公開に間に合わせることにしたそうだ。ただしこの日の試写にそれは間に合わないので、試写で上映されたのは杉浦太陽バージョン。ひょっとするとこのまま永久に日の目を見ない映画になってしまうかもしれない。そんな思惑があったのか、単に最終試写だったせいなのか、松竹の試写室は超満員。しかし僕がこの試写で面白いと思ったのは、メインの『ウルトラマンコスモス2』ではなく、併映の短編『劇場版・新世紀ウルトラマン伝説』だった。ウルトラマン以降の歴代ウルトラシリーズから名場面を抜き出して、音楽に合わせて編集したもの。その中を布川敏和演じるパパと子供が紙飛行機に乗って冒険するという趣向。この映画でびっくりするのは、ウルトラ28ヒーローが音楽に合わせて「ウルトラマンエクササイズ」というダンスを踊るのだ。ミュージカル映画のレビューシーンもどき。武富士のCMみたいにも見える。カメラの前に一列縦隊になったウルトラマンたちが、顔をぐるぐる動かしていくバズビー・バークレー風の振り付けには参った。音楽も歴代ウルトラマンのテーマ曲を巧みにアレンジしてメドレーしていくし、各番組のオープニングタイトルを画面上でコラージュしたりして、とにかく懐かしくて、楽しくて、面白い。
 映画のあとで銀行に立ち寄る。入金が何件か重なっていたので、銀行口座に思いがけない大金が! (まぁたかだか20万円ちょっとなんだけどさ。)当座必要なお金として1万円引き出し、それ以外に郵貯用のお金も下ろして、京橋の郵便局へ。別の銀行でも記帳を済ませて、本日2本目の試写は映画美学校でスティーヴ・マーティン主演の『ノボケイン/局部麻酔の罠』。マーティンが歯科医を演じているのだが、マーティンの歯科医となると、嫌でも思い出すのが『リトルショップ・オブ・ホラーズ』のサディストの歯医者だなぁ……。でも今回はかなりシリアスなサスペンススリラー。共演はヘレナ・ボナム・カーターとローラ・ダーン。今回のボナム・カーターは『ファイトクラブ』と同じキャラだなぁ……。たまには『眺めのいい部屋』みたいなお嬢さん役にも戻ってくれないだろうか。映画はまずまず面白い。普通に面白い。でも普通を越えることはない。
 地下鉄で帰宅。昨日入稿し忘れていた原稿をメールで送り、晩の食事をして、早めに寝てしまう。サッカーは韓国がドイツに敗れた。試合終了と同時にスタンドから大きな拍手。う〜む、やはり韓国サポーターも、ベスト4まで残れたことで「ここいらで十分満足だ」という気持ちになっていたのかなぁ。パソコンで家賃の振込み等を済ませる。お金はある時に使っておかないとね。

6月26日(水)
 午前中に映画の感想を書く。ようやくフランス映画祭横浜の分を書き終わる。まだ昨日見た映画の分がそっくり残っているわけで、これはどこで巻き返すかが難しい。
 午後はヘラルドで『月のひつじ』の試写を観ようとしたら、15分前到着で既に満員で入れない。最終試写だからもっと早く来るべきだった。試写状のファイルで他の試写に回れないか一応チェックしたのだが、ちょうどいいものがないのでしばらく銀座で時間をつぶす。雨も降っていて、ちょっと憂鬱。教文館の3階であれこれ本を見て回っていたら、岩波コーナーで「全集黒澤明(最終巻)」を発見。いつの間に出てたんだろう。奥付を見ると今年5月の日付になっていた。僕は「全集黒澤明」を6巻まで持っているのだが、それは「乱」までの脚本が収録されている。今回の最終巻には、それ以降の作品と「雨あがる」「海は見ていた」それに脚本だけとなった「黒き死の仮面」などが収録されているのだ。これは買うしかない! でもここで買うと重たいので、帰宅してからamazonで注文した。「全集黒澤明」では検索に引っかからず、「全集黒沢明」でひっかかった。6巻までと7冊セットは全部「黒澤」になっているのに、最終巻を1冊だけ注文しようとすると「黒沢」になるのは不可解だ。この会社の人名表記にはかなり揺れがあるので、いろいろ試さないと見落してしまう。ついでにショッピングカートに入っていた加藤隆の「一神教の誕生―ユダヤ教からキリスト教へ」と山北宣久の「おもしろキリスト教Q&A77」も注文。これは教文館で買ってもよかったんだけど、まぁついでです。教文館では他にも面白そうな本を何冊かみつけた。いずれまとめてamazonに注文するか、あるいはハッピー買物券でまとめ買いするか。「キリスト教神学入門」と「旧約聖書略解」はどちらも7500円。他にも欲しいものがたくさんあるんですけどねぇ……。
 3時半からは映画美学校で『クラブ・バタフライ』という韓国映画。夫婦の危機をスワッピングで乗り越えようとするカップルが主人公なんだけど、スワッピング礼賛映画というわけでもなくて、夫婦の生活と性の問題を、スワッピングという特異なモチーフを触媒にしてあぶり出していくといった趣向。アイデアは面白いし、俳優たちも悪くないのだが、撮影がなにやらドンヨリしてクリアな色調になっていないのはちょっと……。全体にすすけて薄汚い感じになってしまった。
 渋谷に出て簡単に食事してから、アミューズピクチャーズ試写室でミラ・ジョヴォヴィッチ主演の『バイオハザード』を観る。監督はゲーム映画の巨匠ポール・アンダーソン。時間制限付の脱出アクションで、記憶喪失になったヒロインという設定がミステリーになって、映画終盤までぐいぐい物語を引っ張っていく。残酷描写もほどよくグロテスクで、アクションの切れもいい。じつに楽しい映画だった。

6月27日(木)
 午前中は映画の感想を書き続ける。終らないなぁ……。午後は1時過ぎに部屋を出て、渋谷の渋東シネタワーで『スコーピオン・キング』を観た。飛び抜けたものもないけれど、主演のザ・ロックの肉体をひたすら誇示することに執着するというコンセプトを貫徹している映画だ。監督はチャック・ラッセル。『ハムナプトラ』シリーズで売り物だったVFXはあまり目立たず、肉体を使ったスタント・アクションを前面に押し出しているのは、この主演俳優あってこそだろう。ザ・ロックはなかなかのハンサムガイなので、いい脚本と演出家に恵まれれば映画スタートしても成功するだろう。
 食事をしてから銀座に出て、教文館へ。思い切って「キリスト教神学入門」と「旧約聖書略解」を買ってしまおうかと思ったのだが、手に持つとやたらと重いので、これは自転車で移動している日でないと買うのはちょっとなぁ……。そんなわけでかわりに「現代人のためのユダヤ教入門」を購入。これは前から欲しいと思っていた本なので、この機会に買っておく。これはユダヤ教の入門書としては、かなり面白そうなものだ。それにしても、僕は少し金回りがよくなると次々に本を買うなぁ……。あ、そうだ。ブリタニカのCD-ROMもほしい。
 夕方からは松竹の試写室で『ドニー・ダーコ』の試写。受付に配給会社の人がいなくても、フィルムさえあれば試写は始まる。映画は一風変わったホラー、あるいは幻想的なおとぎ話、あるいはSF、もしくは青春ドラマ。いろいろな要素が詰まっている映画なのだが、僕はこれを、精神の病に蝕まれていく少年と、彼を見守る周囲の人々の関係を描いた、一種の「難病もの」だと解釈した。精神分裂病の初期症状を見せながらも、それに対して何の手助けもできない医師や家族。本人も自分が少しずつ狂っていくことを自覚しつつ、その狂気の世界に安らぎを見てもいる。病気によって人間関係が少しずつ引き離されていく悲しさを、母親役のメアリ・マクドネルが好演している。
 松竹からは歩いて帰宅。西仲のスーパーで安い発泡酒とワインを買って来たが、この発泡酒はひどく不味かった。悪酔いしそう。

6月28日(金)
 午前中に映画の感想を書いたり、日記をつけたりしているうちに、宅急便で「ヒッチコック・コレクションBOXT」が到着。おまけとしてフィルム缶風のケースに入ったピンバッチがくっついてきた。DVDの封は開けたけれど、これはいつ観られるかなぁ……。まだ「ゴッドファーザーDVDコレクション」もちゃんと観てないんだよなぁ……。先日は「オーメン・トリロジーBOX」も購入して、これは特典映像だけを先に観たんだけど本編は未見。観なければならないDVDがどんどん溜まっていく。そうこうしているうちに来月には注文済みの「マリリン・モンロー・ダイヤモンド・アルバム」が届き、再来月からは黒澤明のDVD-BOXも大映と東宝から出てくるから買わなければならないし……。いかにしてこれらを観る時間を確保するかも、これからの課題かもしれない。
  午後はUIPで『イン・ザ・ベッドルーム』の試写。一人息子を殺された夫婦が、癒されることのない悲しみと怒りをいかにして乗り越えていくかを描く物語。主演のトム・ウィルキンソンとシシー・スペイセクの演技の厚みに圧倒される作品。平凡な家族が、平凡ならざる事件に巻き込まれる姿が痛ましい。金曜日ということで、試写はこれで切り上げる。
 映画のあとは教文館に行って、先日買いそびれていた「キリスト教神学入門」と「旧約聖書略解」を購入する。どちらも買って本棚に並べておくと「これで安心」と思わせるものがあるが、ちゃんと活用しないとマズイね。「現代人のためのユダヤ教入門」を読み始めたが、ユダヤ教の立場から書かれたユダヤ教入門だという点が、むしろ日本人の僕には目新しく思えた。日本で出ている「キリスト教入門」の多くはキリスト教信仰の立場から書かれたもので、僕にはそれがずいぶんとウットウシク思えるのだが、逆に日本で手に入るユダヤ教入門のほとんどは、ユダヤ教信者でもユダヤ人でもない人が外部の視点から書いたものがほとんどだ。その点、今読んでいる本が新鮮に思える。「神の存在を疑ってもよいのはなぜか」「ユダヤ教に律法が必要なのはなぜか」など、キリスト教とはまったく考え方の違う部分から入っていくのもわかりやすい。キリスト教は神の存在を信じることなしには何も始まらない宗教だけれど、ユダヤ教は神を信じていなくても(あるいは神の存在に疑いを持っていたとしても)、そのままで良きユダヤ教徒になり得るという説明は面白い。もちろんユダヤ教徒が書いている本だから、しばしば「ユダヤ教はかくも正しい」「他宗教に比べてこれほど優れている」「ユダヤ人だけは特別な民族だ」という主張も出てくるのだけれど、それをきちんと論理的に立証しようとする態度が見えるため、それを非ユダヤ教徒や非ユダヤ人の立場から割り引いて読むことも容易なのだ。
 荷物が重いのでどこにも寄らずに帰宅。買物は明日にする。部屋に戻ってからは黙々と映画の感想文を書く。残り2本分になったところで夜になったので一端とりやめ。残りは仕事の原稿などと一緒に明日の作業。

6月29日(土)
 午前中から映画の感想を書き続けて、午後になってすべておしまい。その後、土曜日入稿の仕事を1本仕上げて入稿。さらにメルマガの原稿をコツコツ作っていく。夕方に買物に出て、台所でひじきを煮始める。

6月30日(日)
 目覚ましはかかっていたのだが朝寝坊。最近どうも生活リズムが狂っている。食事の時間もバラバラだし、食べる量もやけにたくさん食べてしまったりして、それほど頑丈ではない胃が悪化しているように思う。胃じゃなくて、十二指腸なのかな。胃と十二指腸の間ぐらいかもしれない。
 午前中はCS。その後ビックカメラに寄ってから京橋ラフィナート。八丁堀まで歩いて、木場のイトーヨーカドーへ。昼食はカレーうどん。スニーカーとポンチョを買って帰宅。門仲で地下鉄を降りて、赤札堂で洗剤などを買い、さらにBOOK OFFで本を4冊ほど買って帰ってきた。今回買ったのは講談社現代新書の「ユダヤ人」、中野翠の映画エッセイ「中野シネマ」、矢内原忠雄の「キリスト教入門」、さらに講談社から出ているコラン・ド・プランシーの「地獄の辞典」。これらが全部100円で、今回は300円分のクーポンも持っていたので、出費は105円だった。
 読んでいる「現代人のためのユダヤ教入門」はいよいよ面白い。これはユダヤ教の本質をユダヤ人に解説する本でもあり、他宗教の読者にはユダヤ教の優位性を説明し、あわよくばユダヤ教に引き込んでしまおうという本でもある。著者たちがキリスト教を批判する舌鋒は鋭い。イエスが旧約聖書に預言されているメシアだという「嘘」を、旧約聖書を聖典とするユダヤ人があっという間に突き崩していくのは痛快。まぁこのあたりは他のキリスト教入門書や解説書にも書かれてきたことだけれど、この本にはそうした他の本に見られる遠慮といったものがない。
 まあ僕自身も、新約聖書が旧約聖書を恣意的に引用してイエスをメシアだと立証しようとするのは大いに問題だと思っている。正統派のクリスチャンはこうした新約聖書の記者たちの手法はまったく批判することなく、現代同じように聖書を恣意的に引用して何事かを立証しようとする「エホバの証人」などを非難している。いやはや、読んでいて気持ちのいいものでした。 まぁ「イエスがキリスト(メシア)である」という信仰は、旧約聖書の預言があったから成立したわけではなく、もともとイエスを救世主とする信仰が確立し、その後に新約聖書が書かれたのだから、旧約の預言云々などというのはそもそも我田引水のコジツケであって、キリスト教信仰の本質ではないのだけれどね。



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